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大阪府立産研の業種別景気ヒアリング調査(7)
【ねじ・ネジ・業界紙】
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【収益面では一息つく】
最近の業界での大きな動きとして、平成14年春、15年春と二度にわたって材料価格が引き上げられたことが挙げられる。背景としては、ユーザーのコスト削減志向によりこれまで収益が悪化してきた川上の鉄鋼メーカーが収益の確保を図ったものであるが、輸出を中心とした自動車産業の業績や、経済成長著しい中国における素材需要の高まりなども間接的に値上げ環境を後押しした。
線材二次製品業者は、トン当り五,〇〇〇円といった材料価格の数パーセントにも相当する上昇分を、なんとか製品価格に転嫁することで、収益面では一息ついた感がある。もっとも、川下の三次製品メーカーにとっては、自社製品の需要が低迷し、輸入品との競合が続く中、この様な材料価格の上昇は受け入れ難く、非常に厳しい状況となっている。例えば三次製品の典型的な品目では、輸入品の運送費を含む国内着時点での価格が、国産品の材料+梱包費+運賃にほぼ等しいといったコスト計算になってしまい、「加工賃ゼロでは競争にならない」という。二次製品メーカーからみても、三次製品メーカーは「まさに存亡の危機」「もはや立ち行かなくなるのでは」といった声が聞かれた。
実は、この春にも三度目の線材価格の上昇が見込まれており、二次製品各社ともこの影響を注視している。
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【様々な経営方策】
このような中で、各企業では様々な経営努力を講じている。例えば、他社が手掛けられないような高付加価値製品への取組みなどがあげられる。
戦後、細物針金からスタートしたある企業では、溶融亜鉛めっき、電気亜鉛めっき、銅めっきと年代を追って新たな品目に挑戦し、他社にはない製品を供給し続けている。その結果、ユーザーも建設から日用雑貨、園芸、エレクトロニクスなど多紀にわたるようになった。自動車関連ではエアバック内部のフィルター用ワイヤーを手掛けており、火薬爆発時の耐熱・対粉塵に千分の一ミリ精度のメッシュ管が活用されている。国産エアバックの生産は増加傾向にあり、同社の主力製品となっている。他にも所定の導電率を得るための特殊な銅めっき線など、付加価値の高い製品作りに努力している。昨年はISO9001の認証取得に取り組むなど積極的である。
同業他社ではあまり手掛けないパチンコ玉の製造を続けている企業もある。この企業では、釘から脱皮すべく、戦後早くからパチンコ玉の製造に取り組むとともに、住宅関連などの接合金物を委託生産し、自社はその製品を販売する商社へと転換を図るなどの経営上の特徴がみられた。近年は、パチンコ関連で釘、球に加えてスロットマシンのメダルも供給するようになっている。
別のある鉄線メーカーの場合は、これまで亜鉛アルミ合金めっきの高付加価値製品の開発に取り組んできた。独自の技術で、極厚ながら曲げにも剥げないまっきを施す。近年、さらに強度と耐久性を高めた新製品をシリーズ化して、養殖用イケスや環境に配慮した護岸工事など新たな需要開拓を目指している。商社のみならず金網業者やゼネコン、設計事務所まで、実際に製品が使われるところに近づいたマーケティングを大切に考え、現場の情報収集にも積極的である。
この他にも大阪には特徴ある得意分野を開拓した企業が多く、海底光ファイバーケーブルの保護線を手掛ける企業や、ホビー工作向けの自社ブランドの最終製品を開発し、PRと販路の開拓に取り組んでいる針金メーカーなど、枚挙にいとまがない。
一方で業界では、企業努力にも限界があり、近年の供給過剰状態は、企業数の淘汰をもたらすのではないかという厳しい見方もある。実際、近宴大阪でも、二次製品業者の自主廃業や民事再生法の申請などがみられている。
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第1941号2・3面
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- 大阪府立産研の業種別景気ヒアリング調査(7) -- 2004/09/02 木曜日