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月桂冠、「スーパー麹菌」活用し非食用の原料からバイオエタノール生産技術開発

ニュースリリース|月桂冠 バイオエタノール|

 月桂冠総合研究所は、もみ殻や稲わら、廃木材など非食用の植物を原料にしてバイオエタノールを生産するための基礎的技術の開発を進めています。その中で、清酒醸造に用いる微生物のひとつ、麹菌(こうじきん)を固体培養して、原料の植物セルロースを分解する酵素を大量生産させる技術を見出しました。酒造りにおいて、麹菌が固体である蒸米に繁殖しながら、デンプンの分解(液状化・糖化)を担う酵素を生産することをヒントにしています。

 本研究は、NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)による「バイオマスエネルギー高効率転換技術開発」の一環として、神戸大学、大阪大学の研究者らと共に、2005年から取り組んでいるものです。その研究成果を8月28日、社団法人 日本生物工学会の2008年度大会(会場:東北学院大学=宮城県仙台市青葉区)で発表します。

 植物の主要な構成成分であるセルロースは、グルコースが鎖状に連なった構造をしており、このセルロースをグルコースにまで分解し、酵母に発酵を行わせることで、バイオエタノールが生産できます。

 セルロースは化学的に安定し非常に強固な構造を持っており、この構造を弱め、グルコースにまで分解されやすい状態にするために、現状では硫酸などの化学薬品、または高温高圧水による前処理が必要です。しかし、これらの方法では、原料に大量の水を加え液状化させた後、発酵・蒸留する必要があり、生産システムの省エネルギー化や装置のコンパクト化の障害となっています。

 そこで今回、開発に着手したシステムは、(1)植物原料を固体状のまま分解、(2)発酵を行わせ、(3)出来たエタノールを常温常圧で回収するものであり、使用する水量の軽減、蒸留エネルギーの削減が見込めます。本研究では、その第一段階である固体状態での植物原料の分解をより効率よく行うために、麹菌を固体培養してセルロース分解酵素を大量生産させる技術を開発しました。具体的には、分解酵素の強力な発現を担う新たなプロモーターを染色体上に見出したもので、この機能を持たせたものを「スーパー麹菌」と呼んでいます。

 「スーパー麹菌」の固体培養で分解酵素を強力に生産させることにより、植物セルロースを、酵母がアルコール発酵できるグルコースにまで分解し、植物原料の前処理を代替することが可能になります。

 さらに、植物セルロースをグルコースにまで分解しなくても、「スーパー麹菌」である程度まで大まかに分解したセルロースに、当社が開発した「スーパー酵母」を作用させることで、直接エタノールを生産することも可能となります。

 今後、本技術を実用に供せられるよう、強力なセルロース分解酵素を大量に生産する「スーパー麹菌」の開発をさらに進め、「スーパー酵母」と共に、全工程を微生物に担わせる生産システムの構築を検討していきます。

 日本の酒造りの中で培われてきた発酵技術、微生物や酵素の利用技術を、バイオエタノールの生産に生かすことが、地球環境問題解決の一助になればと考え、今後も研究・開発を進めていきます。

●学会発表について
学会名=日本生物工学会2008年度大会
当研究の演題
<講演番号>バイオエタノール固体発酵に最適な新規麹菌高発現プロモーターの探索<2Da06>
発表者=月桂冠総合研究所: 坂東 弘樹、久田 博元、石田 博樹、秦 洋二、大阪大学:
片倉 啓雄、神戸大学:近藤 昭彦
発表日時=2008年8月28日(大会2日目) 午前10時00分から
講演会場=東北学院大学土樋キャンパス(仙台市青葉区土樋1-3-1)

●スーパー酵母とは
アルコールの生産能力が高い清酒酵母に、麹菌から見出したセルロース分解酵素を作る遺伝子を組み込み、酵母の細胞表面に酵素が高密度に並ぶようにしたものです。前処理によりある程度まで大まかに分解したセルロースに、麹菌の機能を組み込んだスーパー酵母を作用させることで、直接エタノールを生産することができます。

 「スーパー酵母」の開発には、独立行政法人科学技術振興機構(JST)の革新技術開発研究事業の一環として、東北大学、神戸大学、京都大学の研究者らと共に取り組み、その成果を2008年3月28日、社団法人日本農芸化学会2008年度大会で発表しました。

●月桂冠総合研究所について
1909(明治42)年、11代目の当主・大倉恒吉が、酒造りに科学技術を導入する必要性から設立した「大倉酒造研究所」が前身。1990(平成2年)、名称を「月桂冠総合研究所」とし、現在では、酒造り全般にわたる基礎研究を行うと共に、バイオテクノロジーによる新規技術の開発、製品開発まで幅広い研究に取り組んでいます。
(所長=秦 洋二、所在地=〒612-8385 京都市伏見区下鳥羽小柳町101番地)

■当リリースに関するお問合せ先
 月桂冠株式会社 広報室 TEL:075-623-2105、FAX:075-623-2048

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