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NEDO技術開発機構、クラスレート水和物シミュレータを開発

ニュースリリース|NEDO技術開発機構|

クラスレート水和物シミュレータ
分子動力学シミュレーションで計算したクラスレート水和物の系
 【独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 慶應義塾大学理工学部機械工学科】天然ガス成分や水素の新しい貯蔵・輸送方法として注目されるクラスレート水和物。その相平衡条件を分子動力学シミュレーションを用いて予測するシミュレータを開発。
天然ガス等の貯蔵・輸送に係るコスト削減のための予測を可能にした。

<新規発表事項>
 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、慶應義塾大学理工学部機械工学科の准教授、泰岡顕治氏は、高効率エネルギー貯蔵・輸送のためのクラスレート水和物シミュレータを開発しました。

 開発したプログラムは、分子動力学シミュレーションを用いて、クラスレート水和物の相平衡条件を計算するためのものであり、既に実験データがある物質の相平衡条について分子動力学シミュレーションで計算した結果と良い精度で一致することを確認しました。また実験データがないものについて、シミュレーション計算で最適な相平衡条件を予測した上で、相平衡測定の実験を行ったところ、効率的に実験を行うことができ、本シミュレーション計算の有用性を確認しています。

 現在、天然ガスはLNG(注1)やCNG(注2)の形態で貯蔵・輸送を行っています。これをLNGより高温(0℃以上)でCNGより低圧(30atm程度)で生成することができるのが、クラスレート水和物です。本クラスレート水和物により固定化し、貯蔵・輸送する手法では、試算では貯蔵・輸送コストは LNGに比べて20%程度の低コスト化が可能であり、省エネルギーな貯蔵・輸送技術となり得るものと期待されています。

(注1)液化天然ガス。-162℃以下に冷却され液化した状態で輸送される。
(注2)圧縮天然ガス。高い圧力で圧縮されて液化した状態で輸送される。

1.研究成果概要
 実験値が存在しない新規ゲスト物質2,2,3,3-tetramethylbutaneについて分子シミュレーションにより予測することができ、目標のひとつを達成しました。また、熱統計力学モデルを用いたシミュレーションでは、本研究で導出したパラメータを用いると、メタン+水系およびエタン+水系の広い温度領域(特に高温域)において良好に相平衡条件の実験値をシミュレーションで再現できており、その優位性が明白となりました。

2.競合技術への強み
 これまでも炭化水素系のゲスト物質(天然ガス等、貯蔵・輸送の対象ガス)を中心にクラスレート水和物の相平衡データの整備が進んできたが、天然ガス成分や水素を高密度貯蔵させるためにクラスレート水和物を利用する場合には、天然ガス成分や水素以外の大分子量のエネルギー物質(例:2,2-ジメチルブタン、 2,2,3-トリメチルブタン)を含むクラスレート水和物を用いることが提案されています。しかしながら、天然ガス成分や水素以外のゲスト物質を含むクラスレート水和物の相平衡データはあまり整備されてなく、データがない新規ゲスト物質の相平衡条件を見いだすためには、相平衡測定の実験(ベテランの研究者でも通常、3〜6ヵ月かかる)を数多く行う以外ありませんでした。本研究では、実験による相平衡データがないゲスト物質に対して、通常、3〜6ヵ月かかる実際の測定実験を行うことなく分子シミュレーション及び分子シミュレーションと熱統計力学モデルを組み合わせた方法の2つのシミュレーションにより、実験を行うことなく1〜3ヵ月という短時間で相平衡データを取得し、クラスレート水和物での貯蔵・輸送に適したゲスト物質を見出すことを可能にしました。また、クラスレート水和物生成時の動的な過程の予測を可能にする計算機シミュレーションの手法を開発しました。

3.今後の展望
 今後、クラスレート水和物の相平衡予測や連続生成計算をさらに行い、本方法の実用化を目指していきます。また他の利用用途についても、例えばハイドレート冷凍機(クラスレート水和物を高温で生成し低温で分解させることによってヒートポンプを実現する)における新規ゲスト物質の探索にも応用する予定です。実験的に探索する前にシミュレーションにより当たりを付け、目的に合致した物質のみ実験で検証することで、実験に要するコストの大幅カットと時間の節約、研究開発スパンの短縮化が可能になります。分子レベルのシミュレーションを用いた取り組みは今後さらに拡大して行くのではないかと考えています。

4.問い合わせ先
(1)技術内容について
《代表研究者名・所属機関・部署名・役職名》
泰岡顕治 (慶應義塾大学理工学部機械工学科 准教授)
TEL:045-566-1523      FAX:045-566-1495
e-mail:yasuoka@mech.keio.ac.jp 
研究室HP:http://www.yasuoka.mech.keio.ac.jp/ 慶應義塾大学泰岡研究室

(2)制度内容について
NEDO技術開発機構 研究開発推進部 若手研究グラントグループ
 鈴木 智博、日高 博和、千田 和也
TEL:044-520-5174 FAX:044-520-5178
個別事業HP:http://www.nedo.go.jp/itd/teian/index.html 産業技術研究助成事業(若手研究グラント)

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