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ウエスタン・デジタルが買収、HOYAの磁気媒体事業

 【レークフォレスト(米カリフォルニア州)28日PRN=共同JBN】ウエスタン・デジタル社(WD社、 NYSE: WDC)は28日、HOYA株式会社(Hoya Corporation)ならびにHOYAマグネテックス・シンガポール社(Hoya Magnetics Singapore Pte. Ltd.)の磁気媒体スパッタリング事業を220億円(約2億3500万米ドル)で買収することで合意したと発表した。同合意にはHOYA本社がこれらの事業部に対して複数年にわたってガラス基板を供給する約束が含まれており、それによってWD社は同社の2.5インチ・ハードディスク・ドライブ事業の基幹部品を安定的に入手することが可能になり、両社の協力関係はさらに強化されることになる。今回の買収はWD社の磁気記録媒体事業を強化し、今後数年間、予測されるハードディスク・ドライブ需要の伸びに対応する能力を高めることになる。

 WD(登録商標)社は、シンガポールのトアスにあるHOYAの記録媒体スパッタリング事業所の施設、装置、知的財産、運転資本を獲得する。従業員は全員雇用する予定である。HOYAの長坂事業所の研究開発施設に置かれた一部の関連施設も同時に譲渡される。買収は暦年の今四半期中に完了する予定である。

WD社のジョン・コイン社長兼最高経営責任者(CEO)は「今回の投資によって、WD社は顧客の成長を支援する能力を強化することになる。WD社が獲得するのは資産だけではなく、高度に熟練し、豊富な知識を持つ従業員、価値ある知的財産、シンガポールの豊富な学術、技術的な人材とのつながりも含まれる。当社としては立派に運営されているこれらの事業がWD社にシームレスに移行でき、2010年ならびにそれ以降にも予測される当社のハードディスク・ドライブ需要の成長を直ちにサポートできることを期待している」と述べた。

以下は本日の声明に関する質疑応答。

▽WD社について
WD社は記憶装置のパイオニアで、長く業界をリードしてきた。同社はデジタル情報を収集、管理、利用する個人、団体にむけて製品ならびにサービスを提供している。同社が製造する信頼性の高い、高性能ハードディスク装置はユーザーがデータを手元に置き、しかも失われないように保証している。WD社は記憶装置の専門知識を生かして個人用の外部記憶装置、携帯用装置、共有記憶装置を製造している。

WD社の創立は1970年。同社の記憶装置は「Western Digital(登録商標)」、「WD(登録商標)」のブランドで、主要コンピューターメーカー、一部リセラー、小売業者に売られている。同社の財務、投資関連情報についての詳しい情報はウェブサイト(www.westerndigital.com)で投資関連ページを参照。

▽質疑応答

戦略関連質問

問:今回の買収がWD社にとって重要とされるのはなぜか?買収の動機は何か?
 
 ―今回の買収によってWD社は顧客の成長をサポートするために必要な能力を高めると確信している。
 ―HOYAの記録媒体製品事業は製造拠点がシンガポールにあり、WD社と地理的サプライチェーンの点からぴったりと合っている。
 ―今回の買収によって当社は記録媒体の内製・外販比率を当社の期待に合わせて予定より早く変えられるようになる。
 ―メリットはほかにもある。それらには以下が含まれる。
  コスト優位をさらに高める。
  当社の施設が地理的に集中するリスクを低減する。
  才能豊かな従業員を獲得する。
  2.5インチ・ガラス基板の安定供給と知的財産。

問:HOYAの製造能力についてどのような評価をしているか?現有の資産をさらに効率よく運用することが可能か?

 ―HOYAの記録媒体工場は生産性が高く、良く運営されているが、WD社としては規模の拡大、納入先の単一化によってさらなるシナジーや改善が図れると考えている。過去にも記録ヘッド事業や記録媒体事業を買収した時と同様だ。

問:新たに獲得した施設ではガラス基板のスパタリングだけを行う予定か?

 ―当社の予定としては同施設は現状のまま利用する考えだ。しかし、長期的にはガラス以外のどのような記録媒体のスパタリングの需要にも柔軟に対応する計画だ。

問:シンガポールで作られている製品は他地域で作られているものに比べて、記憶密度、品質などでどのように位置づけられるか?

 ―HOYA製品は競合品と同等である。同製品はWD社だけでなく他のハードディスク装置の顧客でも評価済みである。

問:今後、WD社はHOYAのスパタリング事業をどのように組み込んでいく予定か?

 ―今回買収した事業はシンガポールにあるWD社の100%子会社の1部門になり、WD社の記録媒体事業の1部門として事業を行っていく。

問:WD社はHOYAの記録媒体製品事業を分割して、資産や従業員の一部をマレーシアに移管する予定があるか?

 ―WD社は媒体スパタリング事業をシンガポールに置いておくつもりだ。

問:今回の買収によってWD社の競争力はシーゲート社、日立グローバルストレージテクノロジーズ社など垂直統合された業界大手に対して変わるか?
 
 ―当社の利益が徐々に向上すると期待している。

取引・背景関連質問

問:取引条件はどのようなものか?
 
 ―今回の取引は資産を買収する形で行われ、主に固定資産、在庫がその対象である。負債の点から言えば、当社が引き受けるのは主として設備リース、既存資産関連の流動借入債務、雇用従業員関連の将来にわたる従業員経費である。

 ―従業員債務の点ではHOYAが契約締結時点ですべての既存の従業員債務を精算することになっている。取引完了日以降に発生した債務に関してはWD社に雇用されたすべての従業員に対して当社が引き受ける。

問:取引の完了日はいつになるのか?

 ―取引が完了するのは当社が慣習法上で規定された政府の認可を受け、その他の慣習法上の取引完了の条件が満たされた時点で、当社としては暦年で今四半期を想定している。

問:反トラスト法関連の申請は必要になるのか?

 ―今回の取引は顧客に有利になり、反トラスト関連の申請や認可が条件にはなっていない。

問:違約金条項はあるのか?

 ―ない。

問:取引のための資金調達はどうするのか?現金はどのくらい必要か?リファイナンスをするのか、転換社債を発行するのか、または他の手段をとるのか?

 ―今回の買収は約2億3500万米ドルの現金で支払われる。

 ―今回の取引は当社の海外子会社の内部資金でまかなう計画だ。

問:これらの事業がWD社に完全に統合されるのはいつになるのか?

 ―今日、当該事業所は複数の顧客向けに完成品の記録媒体を大量に生産している。当社としてはすべてがWD社向けに移行するのは4ヶ月かかると見ている。

問:HOYAは記録媒体事業をどの程度の期間行っているのか?

 ―HOYAのシンガポール事業所はHOYA日本本社の100%の間接子会社として1995年に設立された。

一般質問

問:今回買収した装置を使って次世代製品をつくることは可能か?

 ―はい。買収された装置は現在WD社の施設で展開されているものと同程度で、将来  の技術に拡張可能である。

問:今回の買収はWD社の技術的ロードマップにどのようにかかわってくるのか?

 ―買収された技術、資産はWD社の製品ロードマップに良く適合するものだ。

問:今回の買収はWD社の記録媒体/基盤の需要/供給の原動力にどう影響するのか?

 ―今回、製造能力が拡大されたことで、いままで計画されていたWD社内部の能力増強は行われない。

問:操業が能力一杯になるのはいつになるのか?その間、ディスク過剰といった事態がおきたらどうするのか?

 ―ディスク過剰といった事態は想定していない。当該施設からの生産物は完全に消化されると考えている。当社はHOYAの顧客に対して、ほかの供給元を探すまで、最長4ヶ月は供給することを約束している。余った生産物はWD社に振り向けられる。

問:ガラス基板はどこから入手するのか?特に直近を見た場合、製造能力一杯に操業するために必要な基板はあるのか?

 ―今回の資産買収契約にはHOYAが当該記録媒体施設の製造能力を満たす量のガラス基板をWD社に供給する、という条項がある。WD社は今後とも複数の供給元から必要なガラス基板を調達するが、その中には別の契約によってHOYAから調達するものもある。

問:有形固定資産(PP&E)の年数、状態はどうか?新しいものを買わずに中古品を買う意味はあるのか?

 ―当該装置は絶えずグレードアップされ、メンテナンスもきちんと行われ、新製品の時と同様に機能しており、WD社の今後の技術ロードマップとも矛盾しない。

問:HOYAの基板事業を買収する予定はあるか?

 ―HOYAの基板資産を買収する予定はない。

問:HOYAは他の顧客に供給する約束はあるのか?
 
 ―第三者との間に供給契約があり、相手もそれを望むのであれば、当社としてはすべての法的な拘束力のある供給義務を果たす用意がある。

問:記録媒体はどのような割合で内部利用/外販するのか?

 ―当社は記録ヘッド、記録媒体とも約80%を内部利用にすると言ってきている。

問:HOYAの施設は自社のガラス記録媒体向けに使うのか?

 ―答はイエスだが、いずれ、すべての媒体向けに使われることになる。

問:HOYAシンガポールの現在の経営層は事業統合の後には何らかの役割を果たすのか?
 
 ―役割は大きく、重要なものになる。当社が買収するのは能力、技術とも高い、効率的で、うまく運営された事業だ。当社はHOYAの経営陣を高く買っており、一緒に仕事をすることを期待している。

問:HOYAの従業員もそのまま雇用するのか?

 ―はい。HOYAの非常に有能な従業員の資質はウエスタン・デジタルが手に入れるHOYAの資産価値の中でも重要な一部であると考えている。

問:今回の買収に対してWD社の顧客はどんな反応を示すと思うか?

 ―この取引は供給の実現性、安定性を強化するもので顧客としても非常に肯定的に見てくれると考える。

問:WD社に供給している会社はどのような反応を示すだろうか?他の記録媒体供給元はどんな反応をするだろうか?

 ―当社と供給元との関係は非常に強い。今後とも大量(最大で需要の約20%)の記録媒体を他の供給元から調達する予定だ。外部の供給先から量と技術を得ることは将来の成功への鍵になる。

問:今回のことは将来の成長プランにどう影響するのか?シンガポールでのプレゼンスを増やすのか?タイやマレーシアでの成長ペースは低下するのか?

 ―当社はハードディスク・ドライブの需要は今後も伸び、マレーシア、タイ、シンガポールを含む当社のすべての戦略的製造拠点での投資は続くと見ている。

問:今回の取引は財務的にはどのようなメリットがあるのか?

 ―主なメリットは安定供給にある。

 ―コストのメリットはそこそこだ。

 ―多くの変数があり、それをすべて計算に入れなければならない。短期的には当社の財務諸表に大きな影響は与えないだろう。

問:コストにはどういう影響を与えるのか?

 ―記録媒体の生産は資本・技術集約型で、労働集約型ではない。コストは今後製造能力一杯に生産されれば、当社の他の記録媒体製造拠点に比べて同等なものとなると思う。さらに、当社の製造拠点の間で一種の効率の他家受粉のようなものが起こって全体として記録記録媒体のコストが下がると考えている。

問:製造能力一杯に生産されるのはいつと考えているのか?

 ―取引完了後、2四半期目には製造能力一杯に生産されると考えている。

問:買収後、どの程度の追加の資本的支出を予定しているのか?

 ―最初の立ち上げ、WD社向けのカスタム化に必要なのは来年1年間で約3千万米ドル程度だろう。その後の資本的支出は当社の現在の支出と同等で、内部の操業率に比例する。

問:記録媒体に関して外販はどのように見込んでいるのか?

 ―資産買収契約によって、移管後最初の4ヶ月の間はHOYAに対して同社顧客の需要を満たすために一定量の供給をすることになっている。

問:研究開発や運用コストの面では何らかのシナジーは期待しているか?

 ―現状の研究開発、運用コストで生産力の増強が得られる。運用コストの面での影響は小さい。当社の運用コストモデルは収入の9から10%で変わらないだろう。

問:バランスシートにはどのような形で影響があるのか?

 ―価値の多くは有形固定資産、在庫のところで発生する。買掛金で少し相殺される。

 ―いくらかの知的財産と営業権もある。

 ―在庫回転率は若干影響を受けるが、当社の現在の12から16回というモデルを大きく変えるほど大きな影響はないだろう。

問:ビジネスモデルに対する影響について詳しい説明をしてほしい。

 ―もう少し先にならないと詳しく評価できないが、当社の売上総利益は現在の18-23%から強化できるはずだ。事業がより垂直統合されると在庫の必要も高まる。当社はいつもそうだが、在庫を最適化するように動くだろう。数字を最終的に固めるにはもう少し作業をする必要があるが、当社は業界のなかで競争力を持ち続けると考えている。

「Western Digital」、「WD」、「WD」ロゴはウエスタン・デジタル・テクノロジーズ社(Western Digital Technologies, Inc.)の登録商標である。その他の商標はそれぞれの持ち主に帰すものである。


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