現在位置: HOME > ニュース&コラム > ビジネス・産業 > 医療機器


O157対策のウシワクチン、カナダが世界で初の認可

 【ベルビル(カナダ・オンタリオ州)27日PRN=共同JBN】食品、水汚染の危険を減らすためのバイオニシェ(商標)が入手可能になった。

 研究ベース、技術志向のカナダのバイオ医薬品会社バイオニシェ・ライフサイエンシズ社(Bioniche Life Sciences, Inc.)(TSX:BNC)は27日、大腸菌(E.coli)O157:H7のウシによる拡散を減らすための世界初のワクチン、エコニシェ(Econiche)がカナダ食品検査局(CFIA)から完全認可を受けたと発表した。これでカナダのウシ生産者、獣医は使用制限なしにエコニシェを使うことができる。

 エコニシェはカナダで発見されバイオニシェが開発した。このワクチンは肉牛、乳牛が環境にまき散らす大腸菌O157の量を大幅に削減し、それによって人間の健康へのリスクを削減する。エコニシェの完全認可はカナダのオンタリオ州ノースベイでこの病気が発生し、200人以上が症状を訴え、溶血性尿毒性症候群(HUS)の1症例を含む約40例の人間の病気が検査で確認されたのに続いて伝えられた。この病気はこの共同体にあるハーベーズ・レストランが関わっていた。もう1つの病気発生にはアイスバーグレタスが関わっており、米国のミシガン、イリノイ両州とカナダのオンタリオ州で2008年9月初め以来50人が症状を訴えた。

 大腸菌のほとんどの菌株は無害だが、O157:H7のような一部は汚染した肉、野菜、水から人体内に摂取されると、激しい症状を起こした時には死亡することもある。エコニシェをウシに接種すれば、食品、水を介したO157:H7汚染の危険削減を助けることができる。

 ブリティッシュコロンビア大学の微生物学者で、バクテリア性疾患の専門家であり、その研究がワクチン開発につながったブレット・フィンレー博士は「ウシは大腸菌O157:H7を運ぶが、ウシは病気にならない。病気が来るのは通常はウシの糞で汚染された食品、水に接触した人間からである。O157のウシへの移住を阻止すれば、人間がO157に触れる回数を基本的に減らせることになり、したがって人間の発症レベルが下がることになる」と語っている。

 ウシへのエコニシェの接種のように、大腸菌O157:H7のウシによる拡散を減らすための牧場での介入は、食品、水の汚染と、この致死的バクテリアの人体感染に伴うその結果を減少させることができる。エコニシェについて行われた臨床試験は、ワクチン接種を受けたウシの糞中に排出される大腸菌の量が大幅に減少することを示している。

 動物用生物製剤配布許可制度によって過去1年間このワクチンを使ってきたオンタリオ州クラークスバーグの特殊牛肉生産会社トップメドウ農場のオーナー、キム・アンソニー氏は「われわれの方も食品安全性の業界リーダーになろうと努力している。大腸菌ワクチンはそれに適している。これまで業界に欠けていたミッシングリンクだ」と語った。

 大腸菌O157:H7との人間の接触、感染は腹痛、出血を伴うひどい下痢を含む深刻な症状をもたらすことがある。重症の場合は腎臓に損傷が起こり、深刻な合併症にまで進行し、さらには死に至ることもある。

 2000年5月に地元農場のウシの糞中の大腸菌O157:H7で町の水道が汚染された結果、7人が死亡し、2000人以上が症状を示したオンタリオ州ウォーカートン町を含むグレーブルース保健区のヘーゼル・リン保健所長は「このワクチンがカナダで完全認可されたことは大ニュースだ。これはこの公衆保健の危険を減少させる革新的なやり方だ」と述べた。

 一般の人がこのバクテリアに感染する危険のある重要なケースはペット動物園や農業展覧会における農場の動物との接触である。こうした動物にエコニシェを接種すれば、カナダ見本市展示会協会(CAFE)が認めているように、バクテリア感染の危険を大きく減らせる。

 CAFEのルディ・フリーセン会長は「ウシが拡散し、環境、水、食品連鎖に入り込む大腸菌O157:H7の量を減少させる介入なら何でもCAFEは支持する。またCAFEは、見本市、展示会部門が家畜との安全な交流のために一般の人に対して合理的な措置をとれるように、ワクチン接種政策の採用をカナダ全体に広げるよう勧めたい」と述べている。

 エコニシェはオンタリオ州政府、カナダ背政府の支援を受けて2500万ドルの予算で拡張工事が進んでいるオンタリオ州ベルビルにあるバイオニシェの生産施設で製造される。この製造拡大期間中はワクチンの供給は限定される。

 ▽大腸菌O157:H7について
 大腸菌O157H7の人体感染は北米では毎年推定10万件が報告されている。このうち2-7%が腎不全を特徴とする溶血性尿毒性症候群(HUS)を発症する(最近の発生時ではこの割合は最高16%にも上昇している)。HUS患者の5%は死亡するが、その多くは腎臓が損傷に対してより敏感な子どもや老人である。

 汚染された食品、水による感染のほかに、動物展示会で大腸菌O157:H7に感染することもある。ペット動物園、見本市、農業展示会が大腸菌感染の多くのルートを提供している。動物との直接の接触は明らかなルートだが、汚染製品(例えば、おがくず、かんなくず、泥の付いた衣類や靴)も人間への感染につながることがある。

 ▽エコニシェについて
 エコニシェは2007年9月、世界の家畜に対する最高の新しい獣医学製品として動物農場業界優秀賞授賞によって国際的な承認を受けた。このワクチンはブリティッシュコロンビア大学(UBC)、アルバータ研究評議会(ARC)、サスカチワン大学ワクチン感染症機関(VIDO)、バイオニシェの間で2000年に結成された戦略提携連合が開発し、バイオニシェがワクチンの世界商業化権を保有している。このワクチンは大腸菌O157バクテリアがワクチンを接種されたウシの腸に付着するのを防ぎ、それによって動物体内での再生産を減少させ、ウシの糞を通じて環境に放出されるバクテリアの量を減少させる。過去6年間に3万頭以上のウシがワクチンの臨床試験に使われた。

 エコニシェの効能に関して2論文が審査の厳しい「ジャーナル・オブ・フード・プロテクション」に掲載された。これらの論文は、900頭近くを対象にして2002年と2003年にネブラスカ・リンカーン大学が行った実地挑戦研究に関するものである。デービッド・スミス、ロッド・モクスリ両博士らの研究者による研究結果のなかには、1畜舎内の過半数のウシにワクチンを接種すると、同じ畜舎内のワクチンを接種していないウシに大きな保護効果があるというものがある。この効果は「群れ免疫」と呼ばれる。「フードボーン・パソジェン・アンド・ディシーズ」に最近発表された別の論文は、商業的に飼育されたウシを対象にして、環境サンプル機器で微生物を検出する可能性について腸管出血性大腸菌O157:H7の3型秘密タンパク質に対するエコニシェ2回投与法の効果を試験する臨床試験の結果の概要を報告している。

 ▽米国の規制上の立場について
 バイオニシェ・ライスサイエンシズ社はエコニシェに対する米国の条件付き認可の条件を満たすために現在努力している。米農業省は今年2月同社に対し、エコニシェの最新データは「『予想効能』標準を満たしており」、同社が「この製品を完全認可に移行させるのに十分なデータを収集する」計画を作成すれば、条件付き認可に値すると通告した。条件付き認可を与えられると、同社は2つの制限-製造過程の少なくも1段階は米国で行うこととバイオニシェはこのワクチンの商標を使うことを許されないこと-付きで米国市場に対する完全なアクセスが与えられる。

 ▽バイオニシェ・ライフサイエンシズ社(Bioniche Life Sciences, Inc.)について
 バイオニシェ・ライフサイエンシズ社は研究ベース、技術志向のカナダのバイオ医薬品会社で、世界のヒトと動物の健康市場向け独自製品の発見、開発、製造、販売に集中している。完全統合会社で、約200人の熟練した要員を雇用し、ヒトの健康、動物の健康、食品の安全-の3事業ディビジョンがある。同社の主要目標はヒト、動物の健康向け製品の販売で得た売上高に支えられて独自のがん治療薬を開発することである。バイオニシェは2008年のカナダ生命科学会社のトップテンの1つに指名されている。詳しい情報はwww.Bioniche.comへ。

 バイオニシェ・ライフサイエンシズ社は2008年10月27日東部夏時間午前10時に記者会見を開く。記者会見のリアルタイムのビデオ・ウェブキャストはオンタイムで視聴可能。視聴はhttp://webcast.marsdd.com/bioniche/2008-10-27で。
 ビデオ・ニュースリリースは衛星経由で10月27日東部時間11時-11時半と14時-14時半に見ることができる。


関連記事

powered by weblio


前後の記事



記事バックナンバー

購読のご案内

取材依頼・プレスリリース

注目のニュース
最新の産業ニュース
写真ニュース

最新の写真30件を表示する