人の器
最近ちょっとしたお祝いがあり、お客様に憧れのレストランへ連れて行って頂きました。私は初めて伺ったお店だったのですが、お店の内装はゴージャスで、スタッフさんたちのプロ意識も高く素晴らしい空間だな、と思ったものです。
お料理はどんなだろう、と胸弾ませてメニューを開いた時でした。私からよく見えるお席の六十代くらいの男性が、若い女性を𠮟責し始めたのです。席はだいぶ離れていましたが、彼女の笑い方や将来の目標などを細々とお説教していらっしゃるご様子。会話が耳に入ってきたので、彼女がまだ学生だという事に気が付きました。その席に近づいたソムリエさんが気まずそうにワインを注いでいたのが痛々しかったです。
明らかにクラブホステスとお客様、の図ですね。表情までは見えません。じろじろ見る訳にもいかないので。私がまず思ったのは「彼女、偉いなぁ。自分の係のお客様でなく、ママかお姉さんのお客様なのに」という事でした。この業界にいると、空気感でその女性と男性がどういう関係かくらい解ってしまう。同伴時間でもない平日のランチから、お世話になっている先輩の為に、ここまで来て厭な想いを吞み込んでいるのだな、って気付いてしまったのです。そして、その男性を哀れな人だと感じました。昭和の親父感ここに持ち込むのやめて、ってイライラした気持ちが芽生えました。私にとって、食事ってすごく大事。軽食であろうがディナーであろうが『美味しい』って思うものを身体に摂り入れたいという欲があります。でもそれって『五感で楽しく』という要素も入ってきますよね。だからネガティブな会話や耳障りの悪い音が入ると食事が不味くなる。私に限らず、誰だって気分良く食事したいものではありませんか?
私がホステスを始めた頃、初めて自分の係りとして関わったお客様が居られます。あの頃、そのお客様は五十代半ばでした。この業界の初心者の私の事を、一人の女性として、人として、とても真摯に向き合い大事にして下さった。少なくとも、記念日に使うような素敵なレストランで、他に食事を楽しみに来ている人々の前で、他人の事を思い遣れないような不細工な真似をする男性ではありませんでした。
年齢や性別に関わらず、人の器というものをつくづく考えた瞬間でした。人の振り見て我がふり直せ……。器を大きく、とまではいかなくとも、小さい人間として生きないようにしたいものですね。
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- 人の器 2024.10.07 月曜日



