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アジア市場に向けた今後の課題=RiskMap2013

 アジアの経済大国 -日本、中国、インド、韓国、インドネシア – はすべて主要なリーダーシップの移行期にあるか、その時期が近づいてきている。 今後、政治的に力のあるリーダーシップの誕生は期待できず、積極的に改革が行われる見通しも限定的であり、事業者にダメージとなるポピュリズム政策が台頭するリスクが高まっているケースも見られる。

 中国では主要指標が上向きに転じたものの、単なる循環的なものではない構造的な景気減速に直面している。来年度の成長率は7%を超えることも考えられるが、これも新しい指導者による抜本的な構造改革への取り組みがあった場合の仮定である。2013年度には経済成長が加速しアジア全体を押し上げると見られているが、2009年度のような勢いにはならないと思われる。ボラティリティと不透明感が高まっている。

 世界的に経済が低成長の時代に、各企業はチャンスを求めてフロンティア市場の調査に益々力を注いでいる。中でもミャンマーがアジアで注目を集めている。投資家はこの経済情勢を長期的なものと解し、不確実で極めて難しい賭けになると見るべきである。

 労働紛争や縄張りの争いからガバナンスや透明性の問題に至るまで、様々な営業課題が世界で最も速く成長をしている地域のビジネスリーダーの多くのウォッチリストの上位に挙げられている。高い可能性を持つものの、益々複雑で競争が激化しているアジア市場において、そのようなリスクの管理はさらに困難になってきている。

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 2012年12月12日シンガポール /PRニュースワイヤ/– グローバルな事業リスクに関するアドバイスを行うコンサルティング会社Control Risks(以下「コントロールリスクス社」といいます)は本日、毎年発行している報告書『RiskMap』を出版。今年30周年を迎える『RiskMap』は事業者や投資家とってのグローバルなリスクに関して、現在背景にある最も大きなトレンドに注目し、2013年に最も重要になると考えられる市場を先取り。

 コントロールリスクス社のCEOを務めるリチャード・フェニング氏は『RiskMap』の発表の席で「今年の『RiskMap』では、世界的に不透明さが増し、リーダーシップの発揮もさらに難しくなると解析しています。会社や国の運営とは戦略や政策の実施であり、環境の変化に対応するために迅速に行動を取り、決断力を発揮することが益々重要になってきます」。

 <『RiskMap』のアジアの見通し>

 アジアの主要経済国の多くがそれぞれ問題を抱えているものの欧州経済が金融危機や景気後退からの脱出に苦しむ中、企業や投資家は引き続きアジア市場に目を向けていくと考えられます。これの基調を背景としてお金が東へ向かうことから、消費者物価や不動産価格の上昇が再び見られると予想。

 またこのような状況は、監視が強化されますます複雑になりながらも主要な事業リスクは低減されていない市場に対して投資や事業の新規資金が流入する上でのプレッシャーともなる。中国やインド、インドネシアといった市場の魅力は引き続き大きいままですが、直接投資の資金は潜在的な可能性を求めて、ミャンマーなどの市場に引き寄せられる傾向が強まっている。

 中国に関するセンチメントは新指導者の着任と共に回復し、経済成長も加速すると考えられるが、2012年が単なる循環的な作用による一時的な変化と見ている人にとっては失望となると思われる。過去のような投資マネーに後押しされた二桁成長の時代は再来しない。苦戦を強いられている構造改革が中国の新指導者によって実施され、安全な道を進んでいくのか、あるいは過去の指導者のように無駄な改革ばかり実行されて延期されてしまうのか、2013年にその結果が出ることになるが、いずれにしてもあまり楽観的な見通しは考えてられない。

 日本と韓国の両国でも、2013年には新しいリーダーが誕生する。安倍晋三氏と朴槿恵氏がそれぞれ有力視されているが、いずれも古くからの問題に新しい解決策を約束しながら、政治論争に巻き込まれてしまい実行に移すことができないという、従来の政権の運命を回避するのに苦戦することが予想される。政権交代直後の財政支出により政策実施の滞りが一時的に緩和されると考えられるが、それでも海外の投資家を刺激するには力不足であると思われる。

 インドネシアとインドでは2014年に主要な選挙が行われるため、これに関連した政治活動やポピュリズムにより、分断化された分散システムを持つこれらの国家における投資リスクは増加していくものと思われる。インドネシアは強含んでいるものの、鉱業セクターが複雑性を増しているため投資マネーが流入しづらい状況となっている一方で、インフラや規制の状況が両国の足かせとなっている。汚職については、民間団体と当局の両側による監視が強化されつつある。

 投資家の間では、ミャンマーで大きな改革があったこの1年、数々の外国人が偵察のためにヤンゴンやネピドーに集結したことに話題が沸騰した。このため極めて低い水準から発展が開始した事業環境の展開が不明瞭になる可能性があり、また政治改革と経済改革を同時に行う計り知れない困難が予想される。成功するか否かは、単にリーダーに指導を任せるのではなく、この不安な過程を乗り切るための組織を構築できるかどうかにかかっている。

 コントロールリスクス社のアジア太平洋地区リージョナルディレクターを務めるトビー・ラッタ氏は、2013年のアジアの見通しを総括して次のように述べている。「成長をする他の地域を探し求めている企業にとって、アジアの新興市場やフロンティア市場は引き続き魅力的なものとなっていきます。しかし指導力の移行は、この地域の主要市場のいくつかにおいては複雑性を増す要因ともなります。地域としては明るい成長見通しがあるものの、多くの企業にとって厳しい環境が続き、組織としての計画のひとつひとつにおいて上位を狙うことはリスクが高いと思われます。成熟していない経済において資産や契約、ローンを持つということは、政府の動きによって不利な影響を受ける可能性があることを意味します。事業活動の問題を管理し、これを上手く誘導していくことは、今後多くの企業にとっての関心領域となると思われます」。

 <『RiskMap』世界の見通し>

 政治リスクと言えば、もはや新興国市場だけの問題ではない。先進市場においても、ここ数十年来で最も高い水準となっている。その主な原因は欧州の債務危機です。『RiskMap』では、以前アラブの春により中東全域の不満が爆発し、社会的動乱が続いた状況も分析。また米国の外交政策について、中東への露出が縮小傾向にあり、アジアへの再注目が始まっているものの、引き続きグローバル政策を取る必要がある点について指摘している。

 ブラジルはこれから数々のワールドグラスのスポーツイベントが予定されており、これを明らかな好材料として今回の世界的な金融危機を比較的上手く切り抜けている。しかし大きな問題も残存している。多発する汚職、高い犯罪率、非効率な官僚制度などの問題が歴代の政府に対する試練となっており、現職のジルマ・ルセフ大統領もまだその回答を調査中。

 エジプトについては、ムスリム同胞団について懸念を抱く必要はないと考えている。経験豊富なビジネスマンが各階層に多数存在し、政治に対する実践的なアプローチや、ホスニー・ムバラク前大統領が残した広汎的な汚職への取り組みに対する関心の拡大などの事情を背景に置きながら、穏健派のイスラミスト勢力による政権はタハリール広場で獲得した功績を保護する、政治的なファイアウォールとなるものと考えている。

 ナイジェリアはサハラ以南の他のアフリカ諸国と同様、投資対象としては人気の地域。特にラゴスはアフリカにおける起業家精神と事業における成功のシンボルとなっている。しかしこのアフリカの巨大都市のダイナミズムは、慢性的な治安の悪さ、インフラの不備、南北格差の拡大などを原因として悪化する国のイメージと裏腹となっている。

 情勢は不安感を煽る困難なものであるものの、変動の激しい世界の複雑性とリスクを特定し、これを管理する能力を持つ者にとっては驚くような場所にチャンスはまだ存在している。『RiskMap』では、このチャンスをどれくらいモノにすることができるかは、リーダーがそれぞれの組織や国において回復力と柔軟性の両方を定着させる能力をどれだけ持っているかにかかっていると強調している。

 出所:コントロールリスクス社


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