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国際経済の新モデル必要、世界の有力エコノミストが一致

 【パリ18日PRN=共同JBN】一部の国はドーハ・ラウンド(新多角的貿易交渉)再開の「新しいアプローチ」を思い描いているが、フランスのシンクタンク、モマグリの主任エコノミストが6月4日と5日にソルボンヌ(パリ大学)で主催した国際ワークショップの最後にパスカル・ラミー氏(元通商担当欧州委員会委員)が提案した論題と数字に異議が唱えられた。

 大学教授でモマグリ主任エコノミストのベルトラン・ムニエル氏はこのワークショップの最後に「農産物価格の変動、投機の影響、農業市場への理解の深まりは、WTO(世界貿易機関)の農業市場に関する自由化戦略に疑問を呈している」と述べた。

 それゆえ、IMF(国際通貨基金)、FAO(国連食糧農業機関)、世界銀行、OECD(経済協力開発機構)、米国の大学、シンクタンク、さまざまな政府機関から参加した30人のエコノミストは主要な2点で全体的な合意に達した。

 -国際社会が主食となる農産物価格の不安定という問題を長期にわたって回避すれば食糧不足を悪化させる可能性がある。

 -国際的な決定を導く現在の経済モデルはこの現実を理解できない。

 マーストリヒト大学(オランダ)のシャマ・ラマニ教授によると、このため新しい国際経済モデルを確立することが重要である。このモデルは価格変動、市場の「金融化」とそれらの食料安全保障への影響など現在の農業問題を忠実に取り入れなければならない。モマグリ・モデルはリアリズムの改善要求に対応する。こういう訳で、ハーバード大学教授兼ビル・ゲイツ財団のエコノミストであるピーター・ティマー氏は、このモデルについて自由化政策の農業市場への影響を評価する上で「この種のものとしては初めてであり無視することはできない」と語った。

 それでは、もしドーハで合意が成立すればパスカル・ラミー氏はどうして1500万ドルの利益(1人、1日あたり7セント)という数字を独断的に正当化できるのか?それは同氏が農業経済分析に不可欠のリスクの影響力、不安定な価格、金融化された市場での投機を考慮していない現在のモデルについて言及しているからだ。

 多角的交渉の背後で問題になっているのは、飢えに苦しむ10億近い人々の生存と農業で生活している世界人口の40%余りの人々の生存であることを忘れてはならない。米ジョンズ・ホプキンス大学のエディ・カルニ教授が想起したように、農業市場が直面するリスクに対する完全な措置をいよいよ講じるための交渉に復帰するのが差し迫った問題だ。

 ▽モマグリ・モデルの最新のシミュレーションの結果
 この点において、モマグリ・モデルの最新のシミュレーションは、ドーハ・ラウンドの結論がすべての農家、特に発展途上国の農家に利益をもたらすだろうという考え方をぐらつかせた。もっと悪いことは、国際農業貿易の完全な無規制の自由化が以下の事態を引き起こす可能性のあることをシミュレーションは示している。

 -最貧国の農家収入の大幅な減少(幾つかのシナリオでは収入の半分以上が減少する可能性があるため、これらの国の多くの農家が壊滅するかもしれない)。

 -これほどでない収入減でもインドなどの新興輸入国にとっては非常に重要だ。

 -先進国農家収入の大幅減少。その結果、生産要因の最適化を奨励する代わりに世界の食糧安全保障と多くの国の発展を危うくする可能性がある。

 ブラジルなどの新興輸出国だけは痛手を受けないだろうが、生産の全般的減少を補うことはできない。

 ▽モマグリについて
 モマグリはパリに本部を置くシンクタンクで、農業の新しいビジョンを進めている。モマグリはフランスの大手農業種子企業リマグラン・グループのピエール・パジェス会長が創設し、自ら会長を務めており、農業関係企業の代表やヘルスケア、経済開発、戦略、国防各分野の関係者で構成される。モマグリの目標は、(経済モデルや指標など)新しい評価ツールを使った農業市場の規制、自由貿易原則に基づく国際農業と食糧ガバナンスに関する新しい提言を支援することである。

 詳細はhttp://www.momagri.orgを参照


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