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クオーク社のsiRNA治験薬、慢性腎疾患に有用と発表

 【フレモント(米カリフォルニア州)9日PRN=共同JBN】RNA干渉(RNAi)を利用した新規治療薬の発見、開発に取り組む新興医薬品会社クオーク・ファーマスーティカルズ(Quark Pharmaceuticals, Inc.)は9日、同社の腎臓部門部長でインディアナ大学医学部教授であるブルース・A・モリトリス博士が、米カリフォルニア州サンフランシスコで6月8日~10日まで開催される「RNA干渉サミット」で、急性腎損傷(AKI)および慢性腎疾患(CKD)モデルに対するQPI-1002動物類似体の有効性を証明するデータを発表すると発表した。クオーク・ファーマスーティカルズが開発中のsiRNA候補薬QPI-1002は、ヒトを対象とする臨床試験まで開発が進んだ初めての全身投与型siRNAである。同薬は、2つのAKIの第1相臨床試験および1つの腎移植後の移植片機能遅延(DGF)の第1/2相臨床試験の対象となっている。QPI-1002は、ストレス反応のアポトーシス経路で中心的役割を果たしている遺伝子p53を標的としている。

 モリトリス教授は、2光子生体顕微鏡を用いて蛍光標識されたsiRNAのラット腎臓内での分布を追跡し、虚血性または腎毒性による腎臓損傷で傷害を受ける主な細胞タイプである近位尿細管細胞(PTC)において急速かつ著明なsiRNAの分布がみられることを明らかにした。ラットAKIモデルを用いたQPI-1002動物類似体の有効性を検討する用量反応試験では、血清クレアチニン濃度の低下とPTCの細胞死を含む腎臓に対する急性の形態学的変性の軽減による著明な効果が示された。再発性虚血性腎傷害に対する同薬の月1回の反復投与では、腎傷害を軽減させ、腎傷害に伴うCKDの進展を抑制することができるとのデータが示された。

 ダニエル・ズール最高経営責任者(CEO)は「QPI-1002については、初めてヒトに全身投与されるsiRNAとして心血管の大手術後のAKIおよび腎移植後の移植片機能遅延(DGF)の臨床試験がすでに実施されているが、同剤のさらなる適用の可能性が見出されたことは感激に堪えない。CKDは腎不全や心血管疾患(CVD)などの合併症に至る非常に重篤な病態であり、米国だけでも2600万人の成人が罹患し、何百万人もの人々が発症リスクを増大させている。われわれは、本疾患の治療を提供するために、これらの試験の継続に力を尽くしていく」と語った。

 モリトリス博士は「現在のCKDの標準治療は、疾患を引き起こす病態の治療による腎臓傷害の進行抑制と患者の食事および運動の改善であるが、今回、QPI-1002が、延命のためには透析や腎移植を必要とする腎機能喪失や末期腎不全に至ることが不可避のAKIによるCKDの進行を抑制する新たな治療手段となり得ることを示すデータが示されたことに興奮している。原因疾患のいかんによらずCKDの病態を直接標的とする治療がみつかるのは大変喜ばしいことだ」と述べた。

 ▽QPI-1002について
 QPI-1002は化学的に修飾された合成siRNA分子で、ストレス反応の中心的遺伝子であるp53を一時的、可逆的に阻害するというクオークが占有権をもつ特許発明に基づいている。QPI-1002薬もクオークの特許によって保護されている。傷害時におけるp53の一時的阻害は、傷害された脆弱な細胞の大量の細胞死を遅延させることで、自然の修復メカニズムが働くようにして組織の統合性と機能を維持する。AKIでは、p53遺伝子が尿細管細胞の細胞死を誘導して腎機能不全に至らせる。AKIの関連において、p53の一時的阻害を用いたRNA干渉(RNAi)技術は、p53を活性化して細胞死に陥りやすい標的腎細胞に著明に蓄積されるというsiRNAの特性を生かしている。クオークはシカゴのイリノイ大学と共同でサイエンス誌のセミナー論文として初めてsiRNAの治療概念について発表した(サイエンス、1999年9月10日、285)。

 ▽クオーク・ファーマスーティカルズ(Quark Pharmaceuticals, Inc.)について
 クオーク・ファーマスーティカルズはRNAiを利用した新規治療薬の発見、開発に取り組む新興医薬品会社である。クオークは治療ターゲットの特定から医薬品開発までをつなぐ完全に統合された医薬品開発基盤をもっている。クオークのRNAi技術には、siRNAに関する知的財産権のある領域でクオークが自由に開発を行える新規のsiRNA構造と化学技術、および目、耳、肺、中枢神経系を含む他の標的組織に非侵襲的にsiRNAをデリバリーする能力が含まれている。

 QPI-1002に加えてクオークの開発パイプラインとしては、ファイザーにライセンスを供与し、現在、糖尿病性黄斑浮腫(DME)および加齢性黄斑変性症(AMD)の第2相臨床試験が現在進行中のPF-4523655(RTP801i-14)がある。PF-4523655は、クオークが遺伝子発見プラットフォームBiFAR(登録商標)を用いて発見した遺伝子RTP801の発現阻害を目的として設計された化学的に修飾された合成siRNA分子である。これらの製品の構造は、クオークがサイレンス・セラピューティックスおよびアルニラム・ファーマスーティカルズからライセンス供与を受けている。QPI-1007は、クオークが開発し、占有権を有する構造を利用したsiRNAで、眼疾患用の神経保護剤として治験薬(IND)申請のための非臨床試験による評価が実施されている。さらに、クオークは社内開発による新規構造に基づくsiRNA候補薬の幅広いパイプラインを有している。

 クオークの本社は米カリフォルニア州フレモントにあり、米コロラド州ボールダー、イスラエルのネスシオナに研究開発施設がある。詳しい情報はwww.quarkpharma.comへ。


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