現在位置: HOME > ニュース&コラム > ビジネス・産業 > 国際情報


ネラチニブに乳がん治療薬効、ワイスが新たな臨床結果

 【カレッジビル(米ペンシルベニア州)29日PRN=共同JBN】ワイス(NYSE:WYE)の1部門であるワイス・ファーマシューティカルズは29日、2つの進行中の臨床研究、すなわち増殖因子受容体HER-2陽性乳がんへの化学療法におけるロシュ社のトラスツズマブ(ハーセプチン、登録商標)との併用によるネラチニブ(HKI-272)の評価およびHER-2依存性固形腫瘍のある患者におけるブリストルマイヤーズスクイブ社のパクリタクセル(タクソール、登録商標)と併用するネラチニブの安全性と薬効を調査する別の研究の予備的データを発表した。2つの臨床試験で集められたデータは、5月29日から6月2日まで米フロリダ州オーランドで開催中の第45回米臨床腫瘍学会年次会議で発表される予定である。ネラチニブはHER-2および上皮細胞増殖因子受容体EGFRキナーゼに対する調査中の経口投与不可逆性阻害剤である。

 米ペンシルベニア州フィラデルフィアにあるフォックスチェースがんセンター内科腫瘍学科のラモナ・スワビ医博は「これらの研究で集まったデータは、これら療法との組み合わせたネラチニブがHER-2陽性乳がんの活性薬剤であることを示す新たな証拠となる。HER-2陽性乳がんの治療にさまざまな進歩が見られたが、転移性乳がん患者に対するより多くの治療法はなお満たされない医療ニーズにとどまっている。これらデータはこのような侵攻性疾患に対するネラチニブの有用性をさらに理解し、評価する現行と今後の調査を正当化する」と語った。

 ▽進行性乳がん治療のためトラスツズマブとの併用するネラチニブ(HKI-272)について
 このトラスツズマブと併用するネラチニブに関する進行中の1/2相臨床研究は、この種の疾患環境における標準的ケアであるトラスツズマブによる治療後に発展した進行性ErbB-2陽性乳がんを評価した。2部構成研究の主要な評価項目は、16週間にわたり乳がんの進行のない無増悪生存期間(PFS)についてである。第1相研究は毎日ネラチニブ(160mgもしくは240mg)プラス毎週トラスツズマブ(初期付加投与量として4mg/kgの静脈注射後2mg/kg)を投与される患者が含まれる。第2相研究では、患者は毎日のネラチニブ(240mg)とともに毎週トラスツズマブの服用を受けた。

 今日まで45人の患者が臨床試験に参加し、28人の患者に薬効があったと評価された。16週間のPFS率(第2相について)は45%(95%静注で16%から62%まで)、平均PFSは16週間(95%静注で15週から31週間)だった。完全効果は7%で、評価された患者の21%は部分的効果を示した。240mgのネラチニブを受けた2人の患者が有害作用を訴え、治療が中断された。

 この研究での何らかのグレードの有害作用は下痢、吐き気、食欲不振、おう吐、無力感、発疹、疲労感だった。この研究に登録された45人の患者で下痢が最も共通する有害作用で、91%の患者で観測され、患者の16%が最も顕著なグレード3ないし4だった。ネラチニブ240mgを投与された患者2人は治療中断につながる有害作用を起こした。
 ▽固形腫瘍患者にパクリタクセルと併用するネラチニブ(HKI-272)の安全性と薬効について
 別々の1/2相臨床試験、オープンラベル、2部構成研究において、毎日経口による漸増用量方式でネラチニブ(160mg、240mg)が静注パクリタクセル80mg/m2、患者の耐用があれば投与日1、8、15で70mg/m2と組み合わせて投与された。固形腫瘍(子宮内膜、子宮頸部、結腸直腸、食道)患者が第1相部分(1部)で登録され、転移性ErbB-2陽性乳がん患者だけが第2相部分で登録された。安全性と薬効はErbB-2陽性転移性乳がん患者について調査された。

 総勢102人の患者は第2相で登録され、97人の患者が薬効を調査された。16週間(第2部)で完全効果率は63%(80%の静注で55/9%から69・4%)だった。

 この予備的分析において、ネラチニブ(240mg)プラスパクリタクセル(80mg/m2)併用による有害作用プロファイルは、単剤療法で両薬剤で報告されたものと同様であった。全てのグレードの有害作用は下痢、脱毛、感染、末梢神経障害、白血球減少、貧血、吐き気、発疹、疲労感、おう吐だった。最も共通する有害作用は下痢症状で、第2部で登録された患者102人中の89%で観測され、患者の25%に発生した最も顕著なグレード3ないし4の作用だった。14人の患者が服用を減量され、1人の患者が有害作用が理由で研究から除外された。

 ワイス・ファーマシューティカルズの医療主任であるゲーリー・L・スタイルズ医博は「新たな臨床データは、これら療法と組み合わせたネラチニブがほかの療法の対象になりながら進行中の女性においてすらHER-2陽性疾患の治療に耐えられ、活性であることを引き続き示している。今回の付加的なデータは、2008年のサン・アントニオ乳がんシンポジウムで発表された臨床結果を積み上げたのであり、ワイスは今回調査中の療法の可能性をさらに評価し続ける」と語った。

 米がん学会は2008年、米国の18万2000人余りの女性が乳がんと診断され、4万人余りが乳がんで死亡していると推計した。HER-2受容体は乳がん患者の25%から30%で過剰発現している。

 ▽ワイス(Wyeth)
 ワイスは世界最大手の研究主導型の医薬品、健康ケア製品会社の一つである。世界中のひとびとの生活の質を向上させる医薬品、ワクチン、バイオテクノロジー製品、栄養剤、一般用医薬品の発見、開発、製造、販売のリーダーである。同社の主要部門はワイス・ファーマシューティカルズ、ワイス・コンシューマー・ヘルスケア、フォートダッジ・アニマル・ヘルスなど。


関連記事

powered by weblio


前後の記事



記事バックナンバー

購読のご案内

取材依頼・プレスリリース

注目のニュース
最新の産業ニュース
写真ニュース

最新の写真30件を表示する