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ポリオ撲滅に6億ドル超、ゲイツ財団などが投入

 【サンディエゴ(米国カリフォルニア州)21日PRN=共同JBN】国際ロータリー、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団、英国とドイツの両国政府は21日、ポリオの撲滅に必要な資金を新たに6億3000万米ドル以上投入すると発表した。現在もアフリカとアジアの一部の地域では、子供たちが、麻痺障害の後遺症をもたらし、時には命をも奪うポリオ(小児麻痺)の危険にさらされている。これら撲滅支援のリーダーは、資金投入の約束に加え、ほかの団体や国にも寄付を呼びかけ、ポリオ感染国の指導者に対しては撲滅活動を積極的に支援するよう働きかけた。

 ゲイツ財団は、ポリオ撲滅のためにロータリーに2億5500万ドルの補助金を授与した。これを受け、ロータリーは今後3年間に会員からの募金で1億ドルを調達し、この補助金に上乗せしてポリオ撲滅に投入していく。これと同時に、英国政府からも追加の1億5000万ドル(1億ポンド)、ならびにドイツ政府からもさらに1億3000万ドル(1億ユーロ)が、いずれも世界ポリオ撲滅推進計画(GPEI)に寄せられた。今後5年間の英国とドイツからの寄付は、ゲイツ財団補助金へのロータリーによる上乗せ寄付には算入されない。

 世界ポリオ撲滅推進計画(GPEI)の主導団体であるロータリーは、主に資金の調達、政府や民間への支援の働きかけ、ボランティアの動員といった役割を引き受けている。今回の発表は、人道的奉仕団体であるロータリーが年に一度開催する国際協議会において行われた。

 ゲイツ財団共同理事長であるビル・ゲイツ氏は「ロータリアン、各国の指導者、保健専門家といった方々の懸命な努力のおかげで、ポリオを患う子供の数は、世界でもほんのわずかとなった。しかし、ポリオウィルスの完全な根絶は難しく、今後も難を極めることだろう。撲滅という目標に私自身が深くかかわるようになったのは、撲滅を目指して努力を傾けるロータリーのひたむきな姿に深い感動を覚えたことが大きな理由である」と語った。

 授与式の挨拶の中で、ジョナサン・マジィアベ・ロータリー財団管理委員長は今回のゲイツ財団との提携がポリオ撲滅のほかの協力者にとって刺激となり、今後さらに支援が増えるだろうと述べた。

 同委員長はさらに「ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団の支援の下、世界中で最も恐れられてきたこの病の撲滅まで、あと一歩である。ロータリーとゲイツ財団による共同の資金投入により、各国政府や非政府団体も支援に前向きになり、ポリオの根絶に必要なリソースがさらに寄せられることになるだろう」と述べた。

 英国のダグラス・アレクサンダー国際開発相は「英国政府からの1億ポンドの寄付誓約は、ほかの支援者から寄せられた資金とともに、この病を世界から撲滅するための闘いを大きく後押しするものだ。感染リスクの高い国では、既に予防接種の回数を増やすなどの対策を取っており、新たな感染者数を減らす上で大きな進展を見せている。ポリオ撲滅を完遂する大きなチャンスを迎えた今、今回の資金投入により、麻痺障害をもたらすこの恐ろしい病で、これ以上、発展途上国の人々が苦しむことはなくなるだろう」と語った。

 ▽今なお必要な資金と政府からの協力
 ポリオ撲滅活動は現在も資金不足の問題を抱えており、撲滅を実現するにはこの不足を埋めなければならない。今回の新たな資金提供、ならびにカナダ、ロシア、米国政府からの寄付を合わせても、2009-2010年度の不足額は3億4000万ドルに上る。ドイツ政府からも新たな寄付が予定されており、これが現実すればこの資金不足がさらに縮められることになる。

 ドイツのハイデマリー・ヴィチョレク・ツォイル経済協力開発相は「先進主要8カ国は、ポリオ撲滅に必要なあらゆる手段を講じることをこれまでに何度も約束した。ドイツはこの約束を守るために多額の寄付を行ってきた。世界の子供たちをポリオから守るために、現地の保健員が必要なサポートを得られるよう、わが国は、資金不足の問題解決をほかの国にも呼びかけている」と語っている。

 ポリオは、アメリカ大陸、西太平洋地域とヨーロッパから完全になくなった一方で、野生型ポリオウィルスは、現在も、アフガニスタン、インド、ナイジェリア、パキスタンに根強く残っているほか、これらの国から流入したウィルスによってほかの発展途上国でも感染者が出ている。最も深刻な課題を抱えているのはこれら4カ国であり、こうした課題には、ワクチンの有効性の問題(インド)、予防接種率の低さ(ナイジェリア)、紛争により現地での活動が困難な状態(アフガニスタンとパキスタン)などがある。撲滅実現は、これらの各国の取り組み姿勢にかかっています。最近の進展状況から見ても、国規模の全面的な取り組みがあれば、こうした課題は克服が十分に可能であると考えられている。

 ロータリー、世界保健機関(WHO)、米国疾病対策センター、ユニセフの主導の下、1988年に開始された世界ポリオ撲滅推進計画(GPEI)は、過去20年間にポリオ感染数を99%減らすことに成功し、その数は1988年の約35万人から、2008年の1600人(推定)にまで減少した。

 世界ポリオ撲滅推進計画は、今回の新たに提供された資金を、幅広い撲滅活動へと充てていく予定である。

*国内の5歳未満のすべての子供に経口ポリオワクチンを投与する「全国予防接種日」
*リスクの高い地域の子供たちに通常より予防接種の回数を増やすための補足的な予防接種活動
*新種ワクチンの研究、および子供たちにワクチンが行き渡るようにするための研究
*撲滅に向けた進展の確認と大発生の予防のための、ポリオ感染の検知と監視活動
 WHOのマーガレット・チャン事務局長は次のように述べている。「残る常在4カ国のあらゆるレベルからのさらなる協力の下、今回の新たな資金投入は、残されたポリオ常在4カ国の政府が全児童にポリオ予防接種を行う妨げを克服するために、われわれがまさに必要とするものである」。

 同事務局長はさらに「ポリオを完全に葬ることが極めて重要である。これは、この病によって子供が麻痺障害を抱えなくて済むようになるという理由に留まらない。撲滅の成功は、どこに住んでいようとも、どんなに困難で過酷な環境にあっても、21世紀には一人残さずすべての子供たちの命を救う医療を行うことができるということを示すメッセージになる」と述べている。同事務局長は、2008年、ポリオ撲滅をWHOの最優先活動にすることを宣言している。

 今回のゲイツ財団からの補助金は、同財団からロータリーに贈られた2回目の補助金となる。最初の補助金は2007年11月に授与され、これを受けてロータリーは同額を上乗せしてポリオ撲滅に寄付することに同意した。

 上乗せ資金を募金するための活動は「ロータリーの2億ドルのチャレンジ」と名づけられ、既に世界中のロータリー・クラブが募金活動に全力をあげている。最初のゲイツ財団補助金が発表されて以来、これまでにロータリーはこの目標に向けて6000万ドル近くを集めている。こうした献身的な活動を高く評価したゲイツ財団は、2回目の補助金を提供することに決めた。ロータリーはまた、rotary.org/endpolio でポリオ撲滅について学び、「ロータリーの2億ドルのチャレンジ」に支援を寄せてもらうため、一般の人々にも協力を呼びかけている。

 ビデオと写真はwww.thenewsmarket.com/rotaryinternationalを参照。


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