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「イタリアンドレッシングについて」

 日本人は生野菜信仰だと少し思う。それが世界トップを競い合う長寿国たる所以なのかどうかはわからないが。

反面、イタリアでは元々加熱野菜を多く食べる国民性である。最近の日本人は食事の最初に生野菜を、すなわちサラダを食べようとする傾向が強いし、専門家の提唱する「健康な食べ方」としても指南されている。

イタリアの食事の作法としては最初に生野菜を食べるということは無かったが、ここ5年くらいで変化してきた。

元々イタリアでサラダというものは食事の最後、メインディッシュの付け合わせとして別オーダーするのが基本的スタイル。日本でイタリアンレストランに行くと、別オーダーしなくともメインディッシュに人参やじゃがいも等が一緒に盛られてくる事が多いが、イタリアではまずそれは無い。お皿の上にはメインとなる料理のみしか盛られておらず、フレンチフライとか、野菜の煮込みとか、レタスサラダ、トマトサラダ等、それらは全て別盛りのサイドオーダーとして機能している。

ところが最近のイタリアでは、まるで日本のように、スーパーマーケットでは洗浄されてカットされた、袋から出して皿に盛るだけのサラダ野菜が売られるようになり、新しいタイプのレストランとしてサラダにメインとなる料理をトッピングしたようなスタイルもちょくちょく見受けられるようになってきた。

ちなみに、そのように時代が変化を遂げても、変わらなくて良い部分をイタリアはまだ残している。それがドレッシングだ。
日本の食卓では何種類もの既製品としてのメーカー製造のドレッシングが使われるのが普通だが、イタリアではドレッシングは自分で作る。しかも即席で。

もっとも日本の食卓のようにあらゆるタイプの、和・洋・中等の国籍のドレッシングを使い分けるという発想もイタリアには無い。基本はイタリアンドレッシングなのだ。材料はワインビネガー、エクストラ・ヴァージン・オリーブオイル、塩、胡椒の4種類のみ。

ワインビネガーは、白、赤、最近ではバルサミコ等を好みによって使い分ける。とにかく即席で簡単だ。あらかじめそれらの材料全部をホイッパーでかき混ぜて作るのも有りがちな方法だが、本場では違う。ボウルにサラダ野菜を入れ、その上にそれらの調味料を順番に注ぎ、スプーンやフォークなどを使って両手で、ボウルの底から野菜を持ち上げるような動作で混ぜるのだ。違いがわかりにくいかも知れないが、何気ないこの一手間が恐らく最も香り高いサラダになる。各調味料の分量は好みや具材によって変わってくるがあくまでも目分量と経験による。

ちなみに、僕は自分の家にも既製品のドレッシングは置いていない。添加物の無いこの即席ドレッシングのほうが安心出来るからだ

本紙2017年6月7日付(2402号)掲載





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