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「生ハムの見分け方~加工肉の価値(最終章)」

 今回は生ハムやサラミなどの目利きや買い方、そして扱い方だ。まず皆さんが一番口にする機会の多い生ハムについて。まず売り場に行ってみよう。ただしこの場合、表示に添加物が色々と書かれているものは除外する。売り場を見ると、スライスされたものが普通にパックに入れられたタイプ(空間には窒素ガスが入れてあったりする。)と、もう1タイプ、空気の入らないようにぴったり真空密閉されたものが置いてある事が多い。生ハムにしてもサラミにしてもまわりは皮で守られているが、純粋なもの程中身はデリケート。すなわち断面が空気に触れると酸化、乾燥しやすいのだ。生ハムを例にとると、脂の部分を見てみよう。状態が良ければ真っ白だが、酸化するとうっすら茶色がかる。具体的に言うと酸化していない脂部分は甘く、これが肉の赤い部分の旨味と調和して幾重も喜ばしい味わいとなる。反面脂が酸化していては凡庸な味わいとなってしまうばかりか、食べていてストレスを感じる。もちろんそれはサラミの中に混ぜ込まれている脂も同様だ。ハムのスライサーの置いてあるレストランで生ハムを切り立てで注文すると良く解る。運ばれてきてすぐに食べないでいると脂が変色していき、そのうち酸化した味になってしまう。早く食べたほうが良いにこしたことはない。だからウチの店ではこれらの切り置きはしない。料理にほんの少し使用する時でも切り立てを使う。その観点からすれば断面まで真空密閉されているもののほうが無難かと思う。

 生肉の熟成から織り成す素晴らしい香りと味わいを堪能するにはやはり切りたてが一番旨い。既にパック詰めされたものを買って来るよりは、その場でスライスしたてのものを頬ばったほうが美味しい。香りだけでなく良質の加工肉は熟成感の中に鮮度がある。それに店員と話していると、味見させてくれるところもある。

 生ハムを食べる時はパンが必要だ。日本はロースハムに食パン文化。もちろんそれも美味しいが、食パンだとイーストの香りが強すぎて、加工肉の風味を生かし切れない。ここはもうちょっと田舎っぽいパン、自分の場合、PAUL(パスコ=敷島製パン)のパン・ド・カンパーニュを合わせるのが好みだが、もちろん町のベーカリーのものでも充分。なぜパン・ド・カンパーニュなのかというと、ライ麦粉が少し入ったくらいのパンの味わいのほうが、良質の加工肉の熟成感としっくりくるからだ。そのパンに状態の良い加工肉を挟んで食べてみてほしい。きっとワインが飲みたくなるはずだ。





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