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第3四半期も増収増益、スピリット・エアロシステムズ

 【ウィチタ(米カンザス州)29日PRN=共同JBN】スピリット・エアロシステムズ・ホールディングス社(NYSE:SPR)は29日、2008年第3四半期の決算を発表した。当該期の売上高は増加し営業利益率も2けたの堅実な伸びを示す一方で、同社は新規事業を獲得、最大の顧客ボーイング社での労働争議にも対応した。

 スピリットの2008年第3四半期の売上高は前年同期比6%増の10億2700万ドルになった。営業利益は増収と経費節減が実現したことにより前年同期の1億700万ドルから4%増加して1億1100万ドルになった。純利益は7400万ドル、完全希釈後1株当たり利益で0・53ドルだった。前年同期は8400万ドル、完全希釈後1株当たり利益で0・60ドル。

表1.決算概要

(単位:1株当たりデータを除き100万ドル)

             第3四半期          9カ月
       2008 2007 増減    2008 2007 増減
売上高    $1,027 $968 6%   $3,126  $2,880 9%
営業利益   $111 $107 4%   $378 $313 21%
営業利益率   10.8% 11.0% (20) BPS 2.1% 10.8% 130 BPS
純利益     $74 $84 (11%) $246 $221 11%
純利益率    7.2% 8.6% (140) BPS 7.9%   7.7% 20 BPS
1株利益(完全希釈後 $0.53 $0.60 (12%) $1.76 $1.59 11%
完全希釈後平均株式数
(百万) 139.1 139.5   139.2 139.2

 2008年第3四半期の1株当たり純利益と収益は、主として米政府研究活動(R&E)税控除に起因する29・5%の軽減実行税率の恩恵を受けた。これは完全希釈後1株当たり収益を0・02ドル押し上げた。また、スピリットは州政府高額投資税控除とR&E控除による前年同期の軽減実行税率の恩恵も受けた。軽減税率は2007年第3四半期の業績に完全希釈後1株当たり0.09ドル寄与した。

 スピリットは9月初め、最大の顧客ボーイング社における労働者のストライキに対応した。国際機械工労働組合(IAM)のストライキを受けてスピリットはボーイングの計画の一部を支援するため全従業員に対し短縮労働週間スケジュールを実施する措置を直ちに講じた。この措置はスピリットの従業員の雇用を継続し、一方でストにより作業量が減少しても同社が生産効率を維持する役に立った。ストの結果、ボーイング向けに引き渡しを予定していた2008年第3四半期の出荷は当初予想よりも9機少なく、この結果同期の売上高は5300万ドル、1株利益は0・13ドルそれぞれ減少した。1株利益への影響にはストに起因する好ましくない1800万ドルの累積遡及修正、1株0.09ドルが含まれる。

 スピリットのジェフ・ターナー社長兼最高経営責任者(CEO)は「われわれは当社最大の顧客におけるストに対応しており、作業は引き続き順調で長期戦略に専念している。売上高は増加し、9月の最後の3週にボーイング・コマーシャル・エアプレーンズ社への引き渡しが減少したため2007年第3四半期と比較するとささやかだが全社的な稼働採算性も引き続き上昇した。われわれは当社従業員と株主に及ぼすストライキの影響を最小限にとどめる努力をしており、一方で全顧客のニーズと必要条件のバランスを取っている。この困難な時期に示された当社チームの仕事ぶりと弾力性を非常に誇りに思う」と語った。

 スピリットは同四半期に主要プロジェクトで幾つかの大きな成果を上げ、アフターマーケットの顧客層を拡大した。また、同四半期に同社はセスナサイテーション・コロンバス機体工場の発展と生産に対応するためウィチタ工場の拡張を発表し、スコットランド・プレストウィックにスピリットの欧州修理ステーションを開設した。さらにノースカロライナ州にA350型機工場建設にも着工した。また、サウスウエスト航空とコンチネンタル航空の両社に予備部品を供給する契約と、三菱重工の次世代リージョナルジェット機(MRJ)のパイロンを開発、生産する新契約も発表した。最近開催された米ビジネス航空協会(NBAA)トレードショーでスピリットは米航空機メーカー、ガルフストリーム社(GulfstreamAerospaceCorporation)の新型ビジネスジェト・ガルフストリームG250の翼のサプライヤーとして発表された。これは先に顧客は匿名で公表された契約である。

 ターナー氏は「商業航空宇宙市場の展望に関して、われわれは長期的な成長を引き続き期待できるグローバル市場で活動することをもちろん考えている。しかし、最近の国際金融市場の動向を注意深く監視し、商業航空宇宙分野への短期的な影響の可能性についても検討している」と語った。

 スピリットの四半期末の受注残は前年同期の235億ドルから35%増加して318億ドルになった。これは2008年の年初来の累計純受注がボーイングとエアバス向けに1360機に達し、両社へ引き渡す累計674機を上回ったことによる。スピリットの受注残はボーイングとエアバスからの公表済み受注残の製品と機数の契約価格と、その他の顧客からの確定注文をベースにして計算される。

 スピリットは稼働効率の改善とボーイング・コマーシャル・エアプレーンズでのIAMのストの影響を反映させるため、2008年第3四半期の契約採算性に関する推定値を更新した。同社は稼働効率の改善に力を入れ500万ドルの好ましい累積遡及修正を行い、ボーイングでのIAMストで発生した1800万ドルの好ましくない累積遡及修正を一部相殺した。この好ましくない修正は現在の契約採算性に対するIAMストの影響を反映している。修正はスト終結の好ましい批准投票と来週初めまでの職場復帰、スピリットが顧客の要求以前に製造したユニットを吸収するための約90日の移行期間を想定している。スピリットの2008年第3四半期業績に及ぼす最終的な影響は、主として機体システム部門で反映された好ましくない累積遡及修正の130万ドルだった。2007年第3四半期には契約推定値の実質的な変更はなかった。

 2008年第3四半期の事業活動に伴うキャッシュフローは前年同期の4100万ドルに対し6800万ドルだった。同社の新規開発計画への継続的投資は主として生産前の在庫に反映されたが、これは収益、顧客からの前払い金、受取勘定に相殺されて余りあった。ボーイングのIAMストライキが要因となってサプライヤーからの材料搬入のタイミングの遅れも同四半期の在庫増加の原因になった。

表2.キャッシュフローと流動性
      第3四半期   9カ月
(単位:100万ドル) 2008 2007 2008 2007
事業活動のキャッシュフロー $68 $41   $147 $105
不動産・工場・機材購入 ($56) ($69)   ($175) ($228)
流動性 08年9月25日  07年12月31日
現金 $178      $133
現在の長期負債部分と長期負債 $592 $595

 第3四半期末の現金残高は1億7800万ドル、債務残高は5億9200万ドルだった。同四半期末現在、6億5000万ドルの回転信用枠のうち約6億3600万ドルは未使用だった。信用枠の約1400万ドルは労働者補償保険に関係する金融信用状のために使用された。同社の信用格付けはスタンダード&プアーズがBB、ムーディーズがBa3と変わらず。

▽展望
 スピリットは事業領域全般にわたり好調を維持しており、堅実なバランスシートと豊かな流動性で健全な財務状態にある。同社はボーイングのストが続く間、またその後も週労働時間の短縮あるいはその他の生産調整の継続を予想しており、一方でボーイング以外の顧客に対する責務を完全に果たすことに努める。ストが終了した段階でスピリットはボーイングと密接に協力して生産計画と引き渡し予定を修正することを想定している。同社はこのプロセスの終了時点で最新の財務見通しを提供する意向で、その時期は11月末以前になると今のところ予想している。

▽セグメント別業績

 - 胴体システム
 胴体システム・セグメントの2008年第3四半期売上高は前年同期比12%増の4億8500万ドルだった。これは数量ベースの価格調整と787型機エンジニアリング部門の非経常利益の増加によるもの。2008年第3四半期の営業利益率は15・2%と前年同期の18・0%を下回ったが、これは主として好ましくない累積遡及修正とセグメントの研究開発支出の増加の結果である。

 - 推進システム
 推進システム・セグメントの2008年第3四半期売上高はアフターマーケットの売上高が2007年第3四半期よりも大幅に増えたことにより前年同期比5%増の2億9200万ドルとなった。同期の営業利益率は16・2%だった。前年同期は16・5%。

 - ウイングシステム
 ウイングシステム・セグメントの2008年第3四半期売上高は前年同期比2・0%減の2億4700万ドルだった。同期の営業利益率は10・9%だった。前年同期は9・3%。利益率の向上は営業効率の改善と研究開発支出の減少が好ましくない累積遡及修正の赤字を相殺して余りあったことを反映したもの。


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