村上泰賢氏の「わが国産業革命のはじまり」85 -日本産業革命の地・横須賀造船所―
「横須賀明細一覧図」
施設群 幕府解散で慶応四年に明治政府に引き継がれた時、「一覧図」の建物群はほとんど完成、稼働していた。ドックだけ右端の1号ドックが建造中であった。鹿児島の集成館も幕末の近代工場としては素晴らしい施設だが、いかんせん水力が原動力のため、生産性が上がらずたちまち史跡になっている。横須賀は着工以来160年近く経過していまだに現役の機能を果たしている。後で詳しく触れるとして、とりあえず「一覧図」の主な工場を右から見ておこう。
・製綱所…右の長い建物は「製綱」で細・太各種のロープを製造する
・船台…船体を組み立て船内諸室の新造、修理も行う造船所の花型職場
・模型、滑車所…「横型」は誤り、鋳造品の木型模型、滑車など木工製品製造
・ドック…右から建造順に1,3,2と建造した。今は右から1,2,3のナンバー
・錬鉄所…鋼鉄の鍛錬を行ない、製品を作る
・製飾所…金銀銅鉄で船の装飾・補強具、鍋釜ナイフスプーンなど小物を製造
・錬鉄所大機械…3tスチームハンマーなどで、鉄を鍛え製品化
・填隙てんげき所…甲板や外舷の隙を埋め、塗装をする
・製鑵かん所…ボイラー、鋼鉄真鍮亜鉛板の製品、パイプなどを製造
・鈩サク所・旋盤所…鍛冶、鋳造した諸機械をヤスリで切削、研磨、鑽孔など
・鋳造所・鉄骨所…鉄製品を鋳造、鉄骨を作る
・組立所…蒸気機関やその他機械の組立及び試運転を行う
・製帆所…船の帆を織り、縫製して大小の帆や天幕に仕立てる
・グレー(クレーン)…30tクレーンで部品を吊り上げて船の艤装工作、購入物品陸揚げ作業
これらの壮麗な工場群を見ると、まさに一大総合工場ということがわかる。
本紙2560号(2021年10月27日付)掲載
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