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阪村氏のねじと人生

スパークプラグの冷間鍛造

 ベトナム戦争、石油危機からアメリカでは、低燃費の日本車が爆発的に売れだした。アメリカの高速道路に割り込む加速性のよいエンジンが求められた。
 

 点火栓の中心が銅で、外側がニッケルの複合成形の中心電極が大量に入用となった。この中心電極はドイツで発明され、ボッシュが一円玉と同じ大きさの鋼とニッケルの板を合わせて、プレスで絞り出す製法を開発したがスクラップが多い。

 阪村機械では、ニッケルの線でスクラップゼロのカップをつくり、その中に銅の端子を入れて熔着させ、7段フォーマーで絞り出すPSG型フォーマーを開発した。現在では、このフォーマーNGKとデンソーにて採用され、日本各社の車メーカーに納められている。

 日本中を走っている99%の車がこのスパークプラグを用い“阪村機械”は車社会に大きく貢献している。

 最近は省エネの関係から熔
着せずに、インコネルと銅が複合成形されるフォーマーが阪村機械にて開発された。守秘契約があるため詳細は述べられないが、イリジウムをのせる先端成形の開発も行われている。

 複合鍛造で大事なことはクーラントオイルを用いないドライフォージングである。堺の包丁も、日本刀もドライフォージングで異種金属を接合している。最近ではステンレスと銅を接合し、よく切れて錆びない台所包丁が鍛造されている。

 また、環境問題からメッキのないボルト・ナットが求められている。ステンレスより強く、比重がステンレスの60%で、海水にも錆びないチタン合金のボルト、ナットが求められているが、欠点はチタンの素材が高価な点にある。

 阪村機械では、複合フォーマーにてチタンの皮膜の複合成形されたボルトと、スクラップレスにて中空拡大成形されたキャップナットを開発した。

 フォーマーの利点は、切削加工では不可能な異形状の穴加工等が1秒間に数個生産される高能率にある。この塑性加工の特長が生かされるパーツの開発が大切でスパークプラグの複合鍛造技術は、これから大いに活用される。

 カップの鍛造は、底厚が鍛造熱と工具の経時劣化にて変動する。そのため、金型は1個ずつ完成品を実測して、鍛造工具の微調整を行うファインアジャスターでフィードバックし、位置制御を行っている。

 毎秒2個程度の鍛造なら補正の演算スピードがついてくる。また、穴と外周との芯振れ同軸度も大切である。これは、機械の精度と工具の構造設計で左右される。そのためラムは、ローラベアリングと油圧で保持し、バックワードパンチは従来のストリッパーパイプを外して固定とした。短寸パンチは、パンチホルダーに固定し、先端部はベアリング部を外してシャンク部を左右A・Bにて保持する方法をとり、金型のテーパー穴と嵌合させる

 フォーマーにて同軸を求めるには、機械と工具、その保持方法以外に、素材の硬度バラツキがあげられる。

 ストッパーレスのニアフィードでの切断面は、切断時にトップベンディングにより傾く。1番パンチで端面矯正を行うが、その時に傾斜化した端面を叩くため、高い部分は硬く、低い部分は柔らかい硬度となり、ステンレス鋼の場合は特に材質上からのバラツキが発生する。後加工のパンチは、この素材に誘導されて行われるため曲って入り、高精度を求めることは難しい。

 サカムラ切断のコンセプトは、必ずストッパーを用いている。阪村機械では、リニアフィードの供給システムは0・5ミリから55ミリまで製作している。

 リニアは、供給寸法の正確さを求めるにはよい点もある。しかし、ストッパーレスで短いブランクのシャーカットを行うと、必ずトップベンディングを発生させ、美しい切断面が得られない。

本紙2004年10月17日付(1947号)掲載。


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