事業継承
飲食店、工場、不動産……、色んな分野で親から子が継がれている職があります。クラブも同じ。オーナーから血の繋がった子へクラブを譲るところも多いです。私が在籍したクラブの一軒では、オーナーと黒服が血縁関係にありました。オーナーママの息子さんが今時のテレビで観る俳優よりずっと整った顔立ちで、背が高くスタイルが良かった。ドラマなら必ず主演に抜擢されるタイプと言っても過言ではないくらい。そこのクラブに入店する女性もその黒服目当てが多かったと記憶しています。でも、まさかオーナーママの息子だったなんて、勤めていた当時は、私を含めホステスたちが知る由もありません。彼は在籍する女性たちの不満聞き、お客様とホステスの関係を把握するのにとても役立っていたと思います。そういった意味で、そこのクラブが上手く回っていたのは家族経営があったからこそだと感じるところがあります。
さて、とあるシステム会社を起業されたお客様に、駅でばったりお会いしました。その方の会社は来年で45周年。たった一人で一から……、それが今や、毎年新卒を四十名採用するほど大きな企業となっているのには目を見張るものがあります。そのお客様は、息子にも娘にも自分の会社は継がせないと、外部から後継者を決められました。傍から見ても世代交代を上手く進められたと思います。
『大きな組織になればなるほど、派閥も増えるし、親子間での継承となると「公私混同」とか「ワンマン」「ボンクラ」なんて言葉を遣われるような妬みも出てくるからね。ボクの息子たちには無理さ。せっかく今まで作り上げてきたものを潰してしまう可能性もあり得るからね。適任採用が会社を長続きするコツだね』
サラリとそう仰いました。一昔前は、血縁や学歴で代表になれるか否かが決まっていたそうで……。それも「おかしい」と二十代の頃から考えられていたそうです。時代の流れで、ようやく日本も実力主義の時代になって来たかな、と。
『そういえば最近、風の便りで、貴女が勤めていたクラブが閉業寸前と聞いたよ。黒服をやっていたあの息子……。ママと揉めて抜けたんだって。具体的に何があったかは知らないよ』
残念だったね、と仰るお客様の清々しいまでに純朴な瞳を見て、達観した人だなぁ、とつくづく感心させられました。所詮、親は親。子供はまた別の人格を持った人間であり、別の人生を歩んでいくものですものね。
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- 事業継承 2024.11.07 木曜日



