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小池安雲の色の魅力

第98章

 とても風の強い日にこの原稿を書いています。私は埼玉県の平野部在住なので、「遮るものがないから風が強いのか」と思ったりもしましたが、おそらく春の陽気から一転して凍えるような寒さになったのが強風の要因でしょう。ころころ変わる気温に、風邪をひかないよう警戒心を強めております。元々喉が弱いこともあり、冬にはマスクが欠かせないのですが、新型コロナウイルスの影響でどこもかしこも売り切れになっていて驚きました。品薄だと知ると「なくなったらどうしよう」という焦燥が生まれるのか、さらに品薄になっていますね。“無いほど欲しくなる心理”はこういうものかと実感しました。一部では、かなり価格が高騰しているとのこと。足元を見るような商売は困りますし、もちろん買い占めるようなことはしませんが、数が少なくなると価格が上がるという市場を目のあたりにして、改めて“希少さ”について考えさせられました。

 このコラムでは色にまつわるさまざまなお話をしていますが、希少さを表す色も、もちろんあります。その色は紫、バイオレットです。日本史が得意な方は、冠位十二階に代表されるように「位の高い人たちが着用していた衣類の色だ」とすぐにピンとくるかもしれません。以前は染料が少なく貴重だったとか、染めるのに手間がかかったと言われる理由で、バイオレットは希少さを表す色になりました。希少であることはすなわち、貴重であることにつながります。貴重であれば、高価になります。こうやって、バイオレットは希少で、高貴で、高価であることを示す色になりました。

 さらに、希少であれば人目に触れる機会が少なくなるため、神秘的であるという要素が強まります。ミステリアスさが増して、人目を惹いてしまうのです。品薄と聞くほどマスクに注目が集まりますが、厚生労働省によると新型コロナウイルス対策には咳エチケットと手洗いが非常に効果的とのこと。冬は冷たい水で手を洗うのを躊躇してしまいがちですが、石鹸でしっかりと手を洗い、アルコール消毒をして、自分ができる最大限の防衛策をとっていきたいと思います。

 ここでいつものワンポイントアドバイス。バイオレットは高貴さを表すため、注目してもらいたいときや、格上に見せたいときにはぴったりの色。しかし、使いすぎると話しかけづらい雰囲気も出てしまいます。バイオレットを使う際には、親しみの持てる笑顔を忘れないよう、くれぐれもご注意あれ!
 
2020年2月17日付・第2499号紙面より


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