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小池安雲の色の魅力

第118章

 十月ですね。柿の実りのおすそ分けいただき、秋を感じる今日この頃です。七月から始めた着物生活は三か月目になりました。夏は浴衣でしたが、先月ようやく長襦袢の着方を学んだため、季節に合わせて着物を着られるようになって楽しいです。着続けてみて実感しますが、着物の形はよくできていますね。どんな体型にもフィットするため多少体型が変わっても着られますし、年齢に関係なく長期的に使えて、夏は涼しく秋冬は暖かい。私がボルトやねじに惹かれる理由は実用と美しさを兼ね備えた構造美にあるのですが、着物にも同じ美しさを感じます。

 そんな風に、着物で暮らすのをただ楽しんで日々を過ごしていたのですが、ふと見たBBCの「ファストファッションの末路……不必要になった衣服の埋め立て地」というドキュメント映像を見て衝撃を受けました。低価格で流行の服が手に入るファストファッションが全盛となっている昨今、リサイクルや寄付という名目でそれらの古着が西アフリカの国々へ大量に送られているとのこと。衣類がただで手に入るため、もともと盛んだった繊維業は廃れ、不定期な輸入に頼るため生活は安定せず、質の良くない衣類は買い手がつかないためその多くが廃棄となり、埋め立てられているそうです。さらに、その埋め立てが海を汚染し、海洋生物に被害が及んでいるという内容でした。事実を知る前は「衣類はリサイクルしてアフリカ諸国に送られます」と書かれていれば、とても良いことだと思っていました。モノの結末を知るのは大切ですね。そこで、思い返したのが着物です。着物は平面的な縫製なのでリフォームしやすく、もしボロボロになったら手ぬぐいや雑巾に加工できます。最後まで使い切ることができる、環境にも良い衣類なのではと感じたのです。

 環境を表す色はコーラルです。コーラルはサンゴの色。サンゴは、二酸化炭素を取り入れて酸素を放出します。サンゴがいずれサンゴ礁となり、多くの生態系を育む環境になるように、好循環を表すのがコーラルの世界です。しかし、温暖化やストレスがあると、サンゴは死滅してしまいます。一方的では成り立たないのがコーラルの世界。環境という大きな問題に一人で立ち向かうのは困難に思えますが、循環を考えるきっかけとして着物の生活を続けていこうと思いました。

 ここでいつものワンポイントアドバイス。コーラルはお互いに助け合う優しい色なので、強気に見せたいときにはご注意あれ!

2021年10月17日付・第2559号紙面より


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