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村上泰賢氏の「わが国産業革命のはじまり」52-日本産業革命の地・横須賀造船所―

フランスの技術援助

 小栗の盟友でのちに勘定奉行やフランス大使を務めた栗本鋤(じょ)雲(うん)は、明治になって横須賀造船所建設の端緒を振り返り造船を主張する忠順とのやり取りを書き残している。

 忠順は「既に外国から買った軍艦を持っている以上、それが破損することは当然のことだから修理する場所がなければならない。まして現在のように外国の古い船を買ったり或は委託して新調したりしても、日本に修船所がなければ、一度壊れたらたちまち役に立たなくなる。だんぜん、よい技術者を迎えて江戸近辺で適する場所を選ばせ、造船所の建設を決定するのがよい」(『匏(ほう)庵(あん)遺稿(いこう)』・意訳)

 造る技術がなければ十分な修理もできないからどうしても江戸近辺に造船所を建設すべき、というのだ。

 造船所建設論を唱えていた小栗にとっても、具体的に技術指導をどの国に委託し、どれくらいの費用と時間がかかり、どのような組織で着手したらよいのか、見当もつかなかったに違いない。結果としてフランスに技術援助を求めた小栗を後世の学者は親仏派としているが、それは当たらない。初めから親仏ではなく、他の国からの技術援助を検討したところ、消去法でフランスが残ったということ。どういうことか。
 
 まず、本来なら日本を開国に導き、遣米使節で見学したあのワシントン海軍造船所やサンフランシスコのメーア島のような造船所を運営しているアメリカに指導援助を頼みたいところだが、アメリカはいま国を二分する南北戦争の真最中でとても日本に技術者を差し向ける余裕がない。

 ロシアは、古くから日本に接近を図っていて、人柄は朴訥のようだが欲しいとなると熊のようにいきなり爪を出して、対馬事件のようなことを起す。古い付き合いのオランダは国力が衰え、植民地はどんどん手放し、「蒸気船は造ってあげますよ」というばかりで技術援助に乗り気にならない。ゆとりが無いのだ。





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