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 はじめまして。さゆりと申します。ひょんな事から、お堅い会社を辞め、銀座でお勤めをするために東京に出てまいりました。二〇一二年の十一月の事です。二〇一六年の十月三十一日に銀座を上がりました。きっちり四年間、夜の蝶をしていた計算になります。上がる、と言うのは、夜の世界での業界用語になるのでしょうか。卒業するという意味です、ハイ。さて、銀座についてのアレコレを書かせて頂きたいと思っているのですが、まずは手始めにそのひょんな経緯をお話ししたいと思います。


 私は、二十六歳の時に大阪に出て会社員をしていました。因みに、私の故郷は兵庫県の山奥にあって、大阪なんて大都会。田舎感の抜けない世間知らず者にとって、街や人はキラキラと輝いて目に映り、その都会の空気を吸うだけでとても新鮮だと思える日々でした。


 「おねーさん、ちょっとお茶飲みにいかへん?」きたきたきたきた。そう、ナンパ、と言うやつです。大阪に住んで半年、だいぶこういう感じのノリになれました。いえ、結構です。そう断ろうとして、ふとその男性の顔を見ました。「あれ? どこかで……」「おお、やっぱりや。また会えた」ずんぐりむっくりで、背は百七十僂頬たないほど。冴えない紺色のジャンパーを着て、まあるい眼鏡をかけています。四十代半ばくらいでしょう。見覚えがありました。「ああ、この前も声を掛けてきた人ね」「そうそう。君、良いもん持ってるで。茶、飲みに行こうや」その人は、先週北新地の駅前で声を掛けてきた男性だったのです。梅田駅も北新地駅もそんなに離れてはいません。偶然と言えば偶然。しかし私は、同じ男性に声を掛けられた事に、ある種の運命的なものを感じました。「北新地のクラブ、ラウンジって場所分かる? いやらしい場所ちゃうで。ただお酒作ってニコニコ笑て、会話をする。君やったら、稼げるようになるで」

 
 私はその日、北新地という飲み屋街のラウンジで体験入店をする事になりました。それが私の、夜の世界に足を踏み入れるきっかけ、となったのです。これから私が体験してきた、遊園地よりも刺激的で、動物園よりも種の多彩に存在する夜の世界について書いてゆきたいと思います。どうぞ宜しくお願いします。

本紙2018年3月7日付(2429号)掲載





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