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経営陣からの学び

 私はその世界に居た四年間で、三軒のお店を経験しました。なので、三人のオーナーママを知っています。御三方とも背負って来たものが大きい分、人生が人相にありありと滲み出ていらっしゃいました。

 一軒目のママは人情味が強いぶん感情的で、二軒目のママは老舗クラブを続けられてきたとあってお金儲けが上手く、三軒目のママは飄々としていて我関せず、という具合。全くカラーの違うママたちでしたがもしも「共通するものは?」と訊かれたら「人を見抜く力がある」と答えるでしょう。でないと銀座でやっていけないですよね。

 在籍の女性一人一人に対する細やかな指導やケアは、ママ以下の経営陣がこなす事が多いです。「専務」とか「常務」とか役職のついている黒服です。ホステスは、勿論東京の子もいますが、地方から出てきた女性の方が多いんです。それは東京自体が「寄せ集め」と言われる通りです。今の時代「出稼ぎの為に」ホステスしていますという女性よりも、大学や昼職の関係で東京に出てきて「バイトで」ホステスしていますという女性の方が圧倒的に多い。そういう未経験者をママなり黒服なり、経営陣がいっぱしの銀座ホステスに育てる訳です。

 一軒目がアットホームなお店だったお陰で、私が最初に仕事を学んだのはオーナーママからでした。女性目線の営業方法、手紙の書き方、お中元お歳暮の送り方、帳簿の付け方、酒の仕入れ等、店管理に関する事は全て覚えさせて頂きました。二軒目のお店では専務から男性目線で営業ノウハウを教えられました。私は一軒目と二軒目の全く違った教えによって、幅広く経営や営業と言うものを学べた訳です。銀座は学校でした。その経験が活きていると感じたのは、ヘルプから売上のホステスとして着実にステップアップを果たす事が出来たという実感があったときでした。お客様の嗜好や性格だけでなく、接待枠や伝票計算まで頭の隅で出来るようになりました。

 最後のお店では、相談を私から持ち掛けるものの、私の仕事方法に口出しする経営陣はいなくなりました。その事は夜の世界を離れた今でも、自分の自信になっています。銀座デビューが遅かったぶん、覚えないといけないと思う気持ちが人一倍強かった。このちっぽけな頭を必死で働かせるしかなかったのです。





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