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小池安雲の色の魅力

第93章

 まだ暑い日が続きますが、耳を澄ますと秋の虫が鳴いているのが聞こえます。「2019年も3分の2が過ぎましたね」という会話にハッとする今日この頃です。脳科学者・池谷裕二氏の本によりますと、人間は、過去については早く過ぎ去ったように錯覚するそうです。「今年もあっという間だな」と感じるこの時間も、思った瞬間から過去になっていると考えると、思わず手で掬って留めたくなりますね。
 
 今この瞬間を表すのはイエローで、現在を意識する色です。イエローはまぶしい光なので何もかもを明晰に見せてくれるのですが、まぶしいがゆえに光が留まり続けると疲れてしまいます。そこで、水のように、留まることのない流動的なブルーの登場です。ブルーは、イエローのまぶしい光を流してクールダウンしてくれます。これらのイエローとブルーが合わさると、「時間」を表すグリーンになるのです。

 ブルーには、流れる・クールダウンするというほかに「感じる」「思う」「表現する」という意味合いもあります。日々明晰に記録されるイエローの瞬間を、自分なりに感じたり考えたり表現したりするのがブルー。そうするうちに時間は過ぎ、過去の流れは早くなります。日々、何かを感じたり考えたりして、自分の感覚に対して意識的であったり豊かであるほど、時間はあっという間に経っていきます。「ああ、時間だけが過ぎていく」とつい嘆きたくなるときは、本当は充実している証なのです。そして流れが早いほど、新しい出来事もたくさん入ってきます。

 つらかった出来事を癒すのは「時間薬」が効くとよく言われます。じりじりと進む時計をじっと見つめていると遅く感じますが、たくさんのことを感じ、その想いを表現したりして、心の新陳代謝を活発にすることで、つらい気持ちは早く過去になっていきます。大変なときこそ綺麗なものを見たり、好きな音楽を聴いたり、誰かに話を聞いてもらったりして、感性を豊かに活かし、満たしていきましょう。一見遊んでいるようにも見えるそれらのことは、心にとって、とても大切な栄養になります。

 2019年もあと4カ月弱! より充実した楽しい時間になりますように。

 ここでいつものワンポイントアドバイス。ブルーは感性を豊かにしてくれる色ですが、好きなことに没頭する色でもあります。感性を豊かにするはずが、好きなことに夢中になりすぎて仕事がおろそかになる…なんてことにならないよう、使いすぎにはご注意あれ!


2019年9月17日付・第2484号紙面より


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